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2006年2月 7日 (火)

アバドのDVD 《トリスタン》第2幕 その2

 粗筋は省略して、昨日の續きです。

 うねるやうな前奏曲からして、あッと言ふ間にマルケ王の城内に誘ひ込まれます。慌ただしい狩の準備の角笛だとか、そわそわした落ち着かない感じが出て、最初に登場する我等の藤村美穂子(Ms.)の歌ふブランゲーネが逸品です。バイロイトの經驗も生きてゐるのでせう、太く通る聲が素晴らしい。一昨年のマーラーの2番(メータ指揮、スーパー・ワールド・オーケストラ)でもリートのやうな精細さを聽かせてくれましたが、侍女としてイゾルデを心配する情感が獨逸語の綺麗な發音と共に心に響きます。DVDですと字幕があるので、詳しく意味がわかるのも嬉しい(最近の原語上演でも字幕はありますが、顔をそちらに向けないといけません。これが結構面倒。)。

 主役のイゾルデはリトアニアのヴィオレタ・ウルマーナ(S.)、トリスタンは英國のジョン・トレーヴェン(T.)。鮪のやうな巨漢が舞臺でごろごろしなくてよかったと内心思ひつつ、トレーヴェンの眉毛の上げ下げばかりが大寫しになり、顔が氣になつてしまひ、肝心の愛の二重唱に集中できません。アバドの音作りがよいので、その上で綺麗に響いてはゐましたが…。
 特筆するのはマルケ王役のルネ・パーペ(Bs.)でせう。腹心トリスタンに裏切られた王の嘆きが、ひしひしと傳はつて來ます。一昨年の讀響、《ワルキューレ》第1幕(演奏會形式)で鬼氣迫るフンディングを聽かせてくれたクルト・モルが現在最高のバス歌手のひとりかと思つてゐましたが、今後が樂しみな若手が増えたのが嬉しいです。《魔笛》のザラストロを聽いてみたくなる、豐かで暖かみのある聲が印象的です。公演後、觀客の拍手から、やはり藤村とパーぺに對して盛大でしたから、皆ちゃんと解つてゐるのですね。

 劍を交へる最後の場面は暗轉して、一氣にオケに目が釘附けになつて、終はります。こんなに集中してDVDを觀て聽いたのは初めてでした。暫くは旋律が頭から離れず、口から零れ、戻った家族から不審の目で見られましたが、お陰で充實した時間が過ごせました。

 病後、伯林フィルと來日したアバドは東京文化會館で《トリスタン》全曲を、痛々しくやつれ乍らも渾身の指揮をし、見事に、健在振りを披露してくれました。伯林フィルの音樂監督辞任後、このルツェルンに於いて2003年、マーラーの2番で、曲目通り〈復活〉し、圓熟味が一層加はり目が離せません。

 86年に伯林に住みだした頃、最初に聽いた伯林フィルの指揮はアバドでした。だいぶ薄くなって來ては居たものの、黒々とした髪もしかとありました。維納のコンツェルト・ハウスの樂屋にサインをねだりに行っても、嫌な顔せずくれました。日本に戻つてからも、アバド&伯林フィルの來日公演は欠かさずに聽いたものです。それはアバド故で、ラトルになると、どうも駄目です。オケ配置から、知らない團員の顔も増えたことで音も變はり、全く別ものの感が否めず、私の好みではありません。氣が附けばアバドがすっかり好きになつてゐたのですね。

 今年10月にアバド、ルツェルン祝祭管絃樂團が來日公演を開きますが、切符が手に入るかどうか心配です。


DVD

アバド / マーラー : 交響曲第2番


販売元:ジェネオン エンタテインメント

発売日:2004/11/25

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