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2006年2月13日 (月)

HMV 194

Hmv1941 私の自慢の蓄音機、英國グラモフォン社製のHMV194型は、この上に202,203と云ふ更に大きな型もありますが、最高級品として知られ、1930年當時、輸入はされてゐませんが土地附の家が買へると云はれた程です。勿論、ゼンマイ式で電氣は一切使つてゐません。

 皆さんが思ひ描く蓄音機は喇叭が上に飛び出たものですが、これは桃花心木(マホガニー)の木目も美しい箱の中に音が自然と廣がり増幅するやうにエクスポーネンシャル・リエントラント・ホーンと呼ばれる筒が折り曲げて入つてゐて、演奏會場のやうな豐かな臨場感を與へてくれるのです。

Inseide 先に開發した米國のヴィクター社は木製ホーンを採用したのに對して、こちらは亞鉛合金ですから、再現音の赴きが違ひます。ヴィクター社の最高級蓄音機「クレデンザ」は聲樂に、グラモフォン社のHMVは器樂に向くと云はれますが、これは好みの問題で得意技の違ふ兩横綱の觀があります。

 初めてこの蓄音機に出會つたのは1994年頃でした。高いと評判の銀座に在る蓄音機専門店で聞かせて頂いた時は、「何時かは」と云ふ單に夢の一部でした。それから1年位たちその店から「競賣」の案内が届くとこの194が出てゐるではありませんか。これを見たら、もう居ても立つてもゐられなくなり、急いで飛んで行くと、型録に出てゐたものは猫足の特殊なもので鳴り方も全然違ひました。最低落札價格は通常のものの半分位でしたが、どうしても音が氣に入りません。そこで以前聞かせて頂いたものをもう一度じっくり聽かせて貰ひました。
 「あッ、これだ!」最初の音の出だしから臨場感が全く違ひます。後で知るのですが、針の振動を音に變へるサウンド・ボックスに因る違ひも大でした。

 其の晩、家に歸へると真先にかみさんに預金通帳を見せて、買つたとしても明日からお茶漬けやカップラーメンの極貧生活にはならないことを証明し、こんこんと蓄音機の素晴らしさを説明したのです。蓄音機の話しになると「結婚前から目を輝かしてゐたから」と反對することなく、實にすんなり承諾してくれました。「反對しても、後でこっそり買はれるよりはいい」と後で言つてゐましたが、この時ばかりはかみさんが觀音様に見えたものです。當時、コロムビアの卓上機がありましたが、良いものを聞いてしまふと駄目ですね。

 翌日、滿面笑みを浮かべ云百萬圓もするにも拘はらず、聲を上擦らせ乍ら「これ下さい」。自動車一臺と同じやうな金額ですが、「大勢で樂しむことができるのだから」と言ひ譯がましく、心に言ひ聞かせても居ました。そして95年の6月にベルランにやって來たのです。
 兎に角、嬉しくて嬉しくて、既に50枚位はあつたSP盤を次から次へと休憩時間にずっと掛け鳴らし、休みの日はかみさんを誘つてわざわざ店に出て來て聞かせまくり、來る人來る人に自慢したものです。これだけ良い機械があると、自ずと良いSP盤も欲しくなり、蒐集のド壺にはまつて行くのでした。

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