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2006年2月15日 (水)

Needles

 サウンド・ボックスが心臓部であるとすれば、「レコード針」は背骨とも云ふべき大事な部分です。音溝の情報を正確に振動板に傳へる役目を果たします。單に溝にはまるのであれば、木綿針でも竹串でも音は出ますが、それではSP盤を傷めるばかりです。

Nadeln 私は戰前に作られ死藏(デッドストック)されてゐた鐵針を愛用してゐますが、様々な種類があります。これは靜岡に住む蒐集家が作つた「レコード針見本」です。上から、鐵針、竹針、サボテンの針、何度も使用可能な特殊な針が順に並んでゐます。
 鐵針ひとつ取つてみても、超弱音、弱音、中音、強音、最強音と5種類も太さに違ひがあります。これは勿論、音の大きさにそのまま比例して、小さな音からとてつもない大きな音まで調整できます。「何だ、ヴォリュームで調整すればいいぢゃん」なんてことは言はないで下さいね。電氣を使はず、動力にゼンマイだけの蓄音機にヴォリューム調整ボタンや摘み何てものはありません。

 音の強弱は針が決めるのです。この曲にはこの針、あの曲にはあの針と選ぶ樂しさもあります。鐵針よりも柔らかい音色が好みでしたら「竹針」を、小さな音で繊細に聽きたいのであれば「サボテンの針」がいい譯です。それぞれ専用のカッターがあり、それを利用して一回毎に切つて鋭い先ッぽにして利用します。言ひ忘れましたが、一面掛けるだけで先が削れてしまひ、もうそれで終はりです。鐵針なら一回こっきりの使ひ捨てですから、随分と贅澤なものです。

 何度も針を替へる煩はしさから解放すべく開發されたのがメッキを施した鐵針です。一曲毎に毎回替へてゐては、熱く燃え上がる筈のダンスも興醒めでせう。真鍮メッキなら10回、生産會社により軸に色を附けてゐるものもあります。ですが、實際に10回も使用したら、盤が傷んでしまひます。針が削られるだけでなく、レコード盤も削りますので、何度も繰り返し聞けば雑音が増えて來て、仕舞ひには盤が白っぽくなつて、使ひものにならなくなります。もう終はりです。
 そしてLPのやうな細い溝を持つSP盤ができると、片面長時間再生せねばならず、従來の針では最後まで行けません。そこで先端に極細のタングステンを使用した針も出て來たのです。

 消耗品の針は現在、日本でも英國でも極少量ですが生産されてゐるので心配はありませんが、自分の好みの音を出す針は昔のものに勝るものはありません。新しければよいが通用しないのが、この針の世界なのですね。 

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