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2006年3月 1日 (水)

アラビアのロレンス

 1989年に倫敦に住んでゐた頃、丁度デビット・リーン監督が1962年に撮つた《アラビアのロレンス》を再編集した完全版が公開され、それに合はせて實在の「トーマス・エドワード・ロレンス」を偲ぶ回顧展も開かれ話題を呼んでゐました。1962年度のアカデミー賞7部門を征した、この映畫を初めて見たのは、テレビだつたと思ひます。前編後編に2週に分けて放送してゐました。かうして見ると、3時間を超える映畫ばかりが好きなやうです。映畫館の上映でも、途中に「interval(幕合)」が入り、トイレへ行つて安心して後半を見た氣がします。

 ブラフ・シューペリアSS100と云ふ「バイクのロールス・ロイス」の異名を持つ998ccの大型バイクに跨り、颯爽と田園を走るロレンスの事故死(1935年)から始まります。第一次世界大戰の際に考古學者としてシナイ半嶋の地圖作りをしてゐたところ、亞剌比亞(アラビア)地域の諜報活動へ回されます。其処で、獨逸側に附いた土耳古(トルコ)軍に對する亞剌比亞人の反亂軍を組織し、砂漠を乘り越えて海にしか砲臺が向いてゐないアカバを襲撃して、成功を収めます。併し、英國政府の中東政策に利用されてゐると感じ始めたロレンスは、一時は潜入した先で土耳古兵に捕まり拷問を受け、逃げ出すものの列車爆發、敗殘兵の襲撃等残虐な行爲にのめり込んでしまひます。理想を求めるロレンスの人間性、複雑な性格、後半では一轉して挫折と英雄視しない描き方も丁寧で、人間味溢れる映畫に仕立ててあります。

 遠く地平線に誰も見えない砂漠で井戸を見附けたロレンスの從者が水を飲むと、射殺されてしまひます。暫くすると砂漠の向かうからオマー・シャリフ演じる部族の王子が駱駝でやって來る場面は特に印象的です。何でそんな遠くが見えるのか、我々の常識なんて通じない世界だと思ひ知らされます。
 ロレンスは最初英國軍の軍服に、足下は茶色のデザート・ブーツです。名前のとおり「砂漠長靴」で、踝を包む程度のブーツで、横が護謨(ゴム)になつて履き易すさうですが、亞剌比亞人に認められてからは勸められるままに純白の民族衣装にターバンを巻いて、砂漠で一人悦に入る場面も印象的です。若干28歳でロレンス役に大抜擢されたピーター・オトゥールの金髪が砂漠の黄色い世界に輝きました。

 アンソニー・クイン演じるベドウィン族の首長の迫力、亞剌比亞人の部族抗爭、現在のパレスチナ問題の發端ともなつた英國政府の二枚舌外交やら、ファイサル王子(アレック・ギネス)の頭の切れるところ、ダマスカスを占領した英國軍將軍が呑氣にフライ・フィッシングの練習をしたり、戰場場面以外も奥の深い作りです。できれば、大畫面のワイド・スクリーンで見ると、モーリス・ジャールの雄大な音樂と共に、眩しいどころか刺すやうな日の光と暑さの爲にクラクラして、喉が渇くこと請け合ひです。




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