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2006年3月16日 (木)

和食の再現

 ベルランを飛び出して「ツェッペリン伯號」に關する再現料理を作つて頂いたこともあります。今も土浦で營業を續ける料亭〈霞月樓〉の會長堀越恒二さんは、實際に係留した飛行船に乘つた数少ない証言者のひとりです。

Kmenu 1929(昭和4年)8月19日、海軍霞ヶ浦航空隊の基地に降り立つた飛行船は、すぐにテント下で歡迎祝賀會が開かれ、乘客は帝國ホテルを目指して常磐線の臨時列車の1等席に乘り込み、エッケナー博士以下11名の士官たちは枝原司令主催の歡迎會へ招かれます。それがその〈霞月樓〉に、献立表も殘されてゐました。和食の献立表はそもそも、主人若しくは板長が料理人に作らせる爲の覺へ書きのやうなものでしたから、詳細に食材が羅列してあります。

 椀盛、刺身、取り肴、焼物、甘煮、小丼、茶碗、水菓子と8品もある、立派な會席料理です。一人當たり4圓したと記録されてゐますので、今のお金に換算すると凡そ40,000圓です。金額からしても、納得のいく最高級の純和食で異國情緒を味はつて貰つたことがわかります。
 梶木鮪(カジキマグロ)、車海老や鮎の塩焼き、鮑の塩蒸し、鼈(スッポン)、葡萄(ぶだう)等普通に手に入るものばかりではありません。火どりきす、大葉百合 うま煮、とうがん壽司等調理法のわからないものも澤山ありました。再現に一番困つたのは「真桑瓜(マクワウリ)」でした。昔は軒先、畦道によく植ゑられて食された夏の甘い果物ですが、高度成長期以降、すっかりメロンに驅逐されて栽培農家が殆どなく、數が揃ふかどうかもわからない状況が續きました。レーマン船長が殘した原書に書かれた料理の印象から、調理法を探し出して確認したり、農家を尋ねたりで、全て揃ふことがわかつたのです。

Mfrlay そして、會長のみならず、現ご當主の堀越恒夫社長、堀越雄二専務、大橋靖弘調理長等の並々ならぬご協力により、2003年7月5日、〈霞月樓〉に於いてこの料理を再現しました。46名と云ふ大勢の参加で、最初に15分位會議室で私があらましを話してから、廣間に移りました。更に、料理が出される度に解説を加へ、飛行船に乘せられてゐたモーゼルワイン(年號違ひ)と共に頂きました。海のもの、川のもの、繊細な味はひが口に廣がり、終始和やかな優雅な食事會でした。真夏日のお晝でしたが、霞ヶ浦を渡る風も心地よく、同じ廣間で食せたことは幸運です。
 以前にもツェッペリン伯爵のお孫さんや乘組員等が來日した際にも再現したさうですが、料理人も替はり、同じ食材を得ることが如何に難しいかを知りました。再現料理の寫眞は料理寫眞家山家學さんに、動畫映像もイーアンドイープロダクツの平向榮さんにお願ひして記録しましたので、何時かこれらを本に、または番組して世に出したいと云ふのが私の夢です。

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