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2006年4月12日 (水)

コヴェントガーデン

 倫敦の歌劇場も昔乍らの立派なものです。隣に野菜市場があり場所の名から「コヴェントガーデン」と呼ばれますが、正式には「英國王立歌劇場(Royal opera)」です。戰前は定期的に歌劇が上演されてゐた譯ではなく、興行主が或る期間借り切つて上演する形式でした。

 初めて訪れたのは、1987(昭和62)年の1月、有給休暇を利用して伯林から倫敦へ飛びました。倫敦フィルの演奏會を中心に殆ど毎晩聽きまくり、獨逸程、英國人は燃えるやうな演奏をしないので、メンデルスゾーンが氣に入られたことがよくわかりました。まあ、はっきり言つて下手でした。極めて中庸な演奏ばかり、生温く感じた程です。

 短期間に回數を聽くとなるとどうしても安い席にせざるを得ません。コヴェントガーデンではリヒャルト・シュトラウスの樂劇《薔薇の騎士》がベルナルド・ハイティンク指揮でかかってゐました。以前友人が盛んに褒めてゐたハイティンクですが、其れまで全く聞いたことありませんでした。噂以上の出來榮へに驚き、手堅く纏める手腕に聽き惚れました。勿論、座席は天井桟敷(Amphitheatre)は當然なのですが、それも右翼の殆ど舞臺も見えない、総譜を勉強する爲のやうな席(Upper Gallery)でした。乘り出すとやっと手すりの間から微かにオケピと指揮者、それに舞臺の前の方が見えます。價格は500圓程度であつたと思ひます。

 さて、開場時間になつて入らうとすると「貴方の切符の入り口は此処ではありません。袖口にお回り下さい」と慇懃無禮に言はれて、まづショック状態に陥りました。英國は階級社會として知られてゐても、天井桟敷は入り口すら違ふと云ふ徹底振りに頭が下がる思ひと同時に、赤絨毯の階段も歩けない惨めさを感じたものでした。またその席は天井桟敷から更に横の扉を押した奥の天上に手が届く程の最上階です。

 ですが、音は素晴らしい。オケも歌も合唱も綺麗に渾然一體となつて豐かな響きが届きます。原語上演ですから、獨逸語なのですが、獨逸で聽くのと何か違ふと感じる所も多々ありました。ベーム、ドレスデン盤よりテムポといい、歌といいノリもよく、流暢に優雅な世界が繰り廣げられ、大滿足でした。數年後にも、もう少し良い席で觀ましたが、ハイティンクの技は衰へることなく、冴え渡り忘れぬ夜を過ごさせてくれました。また、元帥夫人の小姓がほんたうの黒人の少年なのも、美しく、着飾つた亞剌比亞風の衣裳も似合ひ素敵でした。然も、歸へりのチューブ(地下鐵)で花束を澤山抱へ、お母さんと一緒のご本人にばったり逢ひ、こちらはプログラムを見せるやうにして、にっこり微笑むと、恥ずかしさうにしてゐたのが忘れられません。

 DVDとしてご紹介するのは、長らく輸入ヴィデオテープでしか存在を知られなかつた過激な《サロメ》がお薦めでせうか。〈七つのヴェールの踊り〉でほんたうに全裸になることで注目されたものです。

英國王立歌劇場




R.シュトラウス:楽劇「サロメ」全曲


DVD

R.シュトラウス:楽劇「サロメ」全曲


販売元:ジェネオン エンタテインメント

発売日:2003/12/21

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