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2006年4月21日 (金)

悲愴

 〈アダージオ〉のゆったりした音に見る深淵なる世界が、こちらの氣持ちを穏やかにしてくれますが、 この〈アダージオ〉表記の樂章は意外に少ないのは、それだけ特別なのでせう。

 チャイコフスキイの最後の交響曲第6番ロ短調 作品74《悲愴》には、のっけから〈アダージオ〉で始まり第4樂章もまた〈アダージオ・ラメントーソ(緩やかに、悲しく悼んで)〉で始まり、孰(いづ)れも悲劇的な要素が、遅いテムポにより更に強調されます。ただ、初演を任されたナプラヴクニが自筆譜の〈アンダンテ〉を追悼の意味を込めて、〈アダージオ〉に書き換へたと云ふ話しも傳はつており、真相はわかりません。

 チャイコフスキイとしては極めて獨創的な内容ですが、それは最初の暗さにも表され、更に第2樂章のスラヴ獨特の五拍子のワルツも、只聞いてる氣になりませんが、譜面を見ると吃驚します。その上、チャイコフスキイの死因は「コレラ」ではなく、同性愛による秘密裁判で自殺を命じられた、または自ら惱んで死を選んだのか、わかりませんが、隠れゲイとして生きる道を絶たれたことは確かなやうです。現實世界に絶望して筆に託したなんて、簡單に論じる譯にも參りませんが、謎を含み、樂章毎に表題も附けなかつた以上、我々はその點に留意しつつも、ありの儘に受け入れ、性差は別として傑作であると誰もが認める筈です。

 SP盤では、フルトヴェングラー、伯林フィル(HMV DB4609/14)、メンゲルベルク、アムステルダム・コンセルトヘボウ管(Telefunken SK2214/18)、それに珍しい若きカラヤン、伯林フィル(Gramophon 67499/504)が手元にあります。1937~39年に録音されたものばかりですが、非常に個性的で違ひもはっきりしてゐるので面白いです。特にフルトヴェングラーとメンゲルベルクは日本で發賣されると、どちらが良いかで喧々囂々の大騒ぎになりました。それに比べると、カラヤンは若々しいと云ふよりは、青臭い演奏です。

 最近の録音では、西本智実が露西亞で活躍する切掛ともなつた、この《悲愴》は評判いいですね。



チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」


Music

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」


アーティスト:西本智実

販売元:キングレコード

発売日:2002/04/24

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