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2006年4月13日 (木)

リンデン・オパー

 勿論、伯林にも立派な歌劇場が3つも在ります。舊西側のドイチェ・オパーは戰後立て直されたモダンな建物で昔は市立歌劇場でした。そして、舊東側にも2つ在り、小振り乍らロココの飾りが眩いコーミッシェ・オパー(Komische Oper)とウンター・デン・リンデンに面した、伯林随一の歴史を誇る國立(翻譯により州立とも)歌劇場(Staats Oper Berlin)です。後者は通りの名前から「リンデン・オパー(Linden Oper)」と呼ばれて親しまれてゐます。
 啓蒙君主フリードリヒ大王の御代、1742(寛保2)年に創設された「宮廷歌劇場」ですが前身です。1843年に火災で焼け落ち、翌年カール・フェルディナント・ラングハウスの設計で再建され、1918年に「國立」になり、リヒャルト・シュトラウスやワインガルトナーが指揮臺に立ち、20年代はエーリヒ・クライバーの下、黄金時代を迎へてゐます。特にアルバン・ベルクの歌劇《ヴォツェック》初演の様は語り種(ぐさ)になる程凄まじかったさうです。そして、第二次大戰でまた焼け落ち、正面の一部を除いてごっそり崩れたものを、ほぼ同じやうに再建し、馬蹄形の美しい客席は、どこの席でも見易く、素晴らしい音響を取り戻してゐます。一階平戸間は正面から綺麗に聽こえ、二階正面ですと左右を回つた音が聽こえ、三階席ですと反響が混じり合つて聽こえます。

 此処へは、壁の在る頃に24時間査証を取り通つたものです。《マイスタージンガー》が特に印象に殘りました。調子の惡いザックスは幾度も咳き込んでましたが、何とか歌ひ通し喝采されてました。合唱の隅々までマイスターで占められた東の底力を感じましたが、天井桟敷の座席よりゼクト(發泡酒)の方が高かつた笑へない話しがあります。來てゐるお客も着飾った西側の人はすぐに目立つのでわかり、東の官吏や軍人なんかもよく見掛けたものですが、庶民も3階席で氣輕に觀てゐたものです。

 3年前に訪ねた時は、もうバレンボイムの音で、機敏さが少なくひたすら重厚鈍重さを目指してゐる感じでした。ヴェルディの《ラ・トラヴィアータ》も近未來のマトリックスのやうなデザインで、一緒に日本から行つた方々には不評でしたが、とても樂しめました。そして違う指揮者の《薔薇の騎士》も品良く、健康的でしたね。

 SP盤としては、1928~33年に若きクナッパーツブッシュが精力的にこのオケと録音してゐます。晩年の大きなうねるやうな巨大な演奏の片鱗はまだなく、そつなく片面にイン・テムポで切れ目まできっちり入れる演奏をしてゐます。〈七つのヴェールの踊り〉Odeon O-6788は、おどろおどろしさや、妖艶さのない至つて明るいものです。そして、クライスラー(提琴)、ブレッヒ指揮のメンデルスゾーンやブラームスの提琴協奏曲もマイクロフォン初期録音の1926年とは思へない、はっきりクッキリした音像で、優雅さに溢れた演奏です。


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