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2006年4月26日 (水)

 この針罐に入つてゐるものは、殆どが鐵針です。HMVの犬印の中には竹針もありますが、極まれにしか見たことがありません。あったとしても、非常に高價な死藏品となり、氣輕に使ふ譯には參りません。

 竹針は柔らかいですから、12吋盤片面ぎりぎりと云ふ感じです。然も、戰後録音の巨大音が入つた管絃樂曲や交響曲では途中で摩耗してしまひ、最後まで再生せずに壊れたレコード状態に陥り、同じところをグルグル回るか、或ひはサウンドボックスの重みで突然止まつてしまひます。ですから、聲樂や器樂の獨奏に向いてゐます。響き渡るやうな音量はありませんので、近くで聽かざるを得ませんが、柔らかい音に仕上がります。クライスラーやカザルスの柔和な演奏にはぴったり嵌る感じですね。

Bamboo2 また、竹針は使つた後に先っぽだけ専用の鋏で切り落とすと、新しい鋭利な角が作られ、チビ助になるまで幾度でも使へます。一回しか使へない鐵針よりは効率がいいのですが、そもそも蓄音機に効率なんか求めても無意味な話しです。現在も細々とですが、作られてゐる爲、補充も簡單ですし、鋏で切る作業が何とも風雅な氣がします。見てゐる人が興味津々でグッと顔を近附けて來るのも、この瞬間です。「竹で音が出る?!」自分の耳で聽くまでは、皆さん信用してゐないのか、吃驚される方が多いですね。

 蓄音機好きな方が多く集まるのは嬉しいのですが、「そんなの、戰中の代用品ぢゃないの」とやや蔑んで言ふ方も居ります。「それならどうしてHMVでも發賣されたのでせうか」とこちらから尋ねると黙ります。これは音色を考へて試行錯誤の上に作り出された筈で、事實、HMVでは20世紀初頭から竹針も竹針カッターも發賣されました。確かに物資不足から戰中に陶針や硝子針も賣り出されましたが、それとは全く別ものです。

Hmvcut2 HMVの竹針カッターはいちいち、サウンドボックスから竹針を外さずに、装着したままカットしようと云ふ横着な發想を具體化したものです。ただ、主軸に引掛けて使ふので、殆ど使つたことはありません。

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