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2006年4月 3日 (月)

第九

Beethoven  一期一會のライブ、即ち生演奏の實況録音となると途端に燃える指揮者がをります。スタジオでの正規録音では餘り熱が入らないのに、觀客の居る演奏會そのものを録音となると、生氣が漲(みなぎ)り、溌剌とした演奏をしてくれます。

 まづ擧げられるのは、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーでせうか。以前書いた通り彼が1951(昭和26)年、バイロイト音楽祭の開幕に際し演奏したベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調〈合唱附き〉作品125は語り尽くされた觀がありますが、實況録音の良さが出た白熱した演奏で知られてゐます。

 フルトヴェングラーは〈第9〉が餘程好きであつたのでせう。斷片録音や部分は別として全曲盤は11組殘されてをり、何か執着と云ふより執念のやうなものを感じます。然も皆實況録音ばかりです。最も古いものから順に擧げれば、

 ①1937(昭和12)年5月1日 伯林フィル 倫敦(ロンドン)録音
 ②1942(昭和17)年3月23~24日 伯林フィル 舊フィルハーモニー録音
 ③1942(昭和17)年4月19日 伯林フィル 舊フィルハーモニー録音
 ④1943(昭和18)年12月8日 ストックホルムフィル 瑞典(スウェーデン)録音
 ⑤1951年(昭和26)年1月7日 維納フィル 樂友協會録音
 ⑥1951年(昭和26)年7月29日 バイロイト祝祭管 バイロイト録音
 ⑦1951年(昭和26)年8月31日 維納フィル ザルツブルク録音
 ⑧1952年(昭和27)年2月3日 維納フィル 樂友協會録音
 ⑨1953(昭和 28)年5月31日 維納フィル 樂友協會録音
 ⑩1954(昭和29)年8月9日 バイロイト祝祭管 バイロイト録音
 ⑪1954(昭和29)年8月22日 ルツェルン音樂祭管 ルツェルン録音

 ①は英國國王ジョージ5世の戴冠式記念に招かれたもので、ビニールの78回轉盤19面に試驗的に録音されただけで發賣はされず、LP時代になつて復刻されました。②は進駐して來た蘇聯軍に親盤(マスター)テープが接収され、蘇聯のメロディア社からLPが發賣されました。③はヒトラーの誕生日の前日にも録音され、一部記録映畫に殘つてゐます。宣傳相ゲッペルスとの握手後、手を拭ふ巨匠の姿が寫つてゐます。④は戰中に招かれて指揮したもの。⑤から戰後録音となり、維納フィルとの録音が増えます。⑥が有名なバイロイト録音。⑦はザルツブルク音樂祭の録音。⑧と⑨は維納フィルと入れたもので、⑩は病後のバイロイトで、⑪はルツェルンでの第9最後の録音です。

 この《第九》は、第一樂章から力強い旋律が現れ、齒切れが良く躍動感に溢れる第二樂章、非常に穏やかな第三樂章、終樂章は苦痛に滿ちた回想から「歡喜」の歌が登場し、彌が上にも盛り上がつて合唱が重なり、頂點を迎へます。徐々に速度を速め、やや煽るやうにして迎へる絶頂(クライマックス)は良くも惡くもフルトヴェングラーらしさが一番出ます。

 各演奏批評は既に多くの方がされてをり、好みもあるでせうから、參考までにフルトヴェングラー鑑賞記を擧げておきます。各社CDにより聞き比べをされてゐます。生前は日の目を見なかつた録音も入つてゐるのですが、他にこれ程録音してゐるのはカラヤン位なものです(17種)。

 歐州では師走の風物詩なんてことはなく、何かの節目に演奏されますが、日本の場合、戰後のひもじい樂團員が年を越せるやうに、客入りのよい〈第9〉が12月に演奏されました。テレビ宣傳にも使はれ、最も馴染みの深い〈ダイク〉です。勿論、他の作曲家にも〈交響曲第9番〉がありますので、今週は〈交響曲第9番〉に拘つて書いて行きませう。




ベートーヴェン:交響曲第9番


Music

ベートーヴェン:交響曲第9番


アーティスト:フルトヴェングラー(ウィルヘルム),シュワルツコップ(エリザベート),エーデルマン(オットー),ヘンゲン(エリザベート),ホップ(ハンス),バイロイト祝祭合唱団

販売元:東芝EMI

発売日:2004/12/01

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コメント

 ベートーヴェンの第九って、あらゆるクラシックの中でも有数の強さで何かたくさんの演奏を聴き比べたくなる特別な力があるような気がします。
 演奏家にとっても、何度でも演奏してみたくなる曲なのかもしれませんね。

投稿: Tiberius Felix | 2006年4月 3日 (月) 22時38分

 〈第九〉はそれだけ懐の深い曲なのですね。

 それに、〈第九〉を全く録音しないか、何度も録音するかの孰れかで、1回だけと云ふ指揮者は案外少ないかも知れません。

投稿: gramophon | 2006年4月 4日 (火) 10時18分

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