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2006年4月17日 (月)

アダージオ

 オペラの中で夢を語らふ場面はゆったりとした速度で歌はれます。音樂の速度標語に「Adagio(緩やかに)」と云ふのがあり、これがゆったりとして心安らぐものです。以前、カラヤン死去後、すぐにアダージオ曲ばかりを集めた、その名もずばり『アダージオ』が爆發的に賣れたものです。クラシックに餘り興味のない人でも、何処かで聞いたことがあるのか、癒し効果を狙つたのか、わかりませんが、兎に角大騒ぎになりました。もう廢れましたので、今週は〈アダージオ〉を選んでみませう。

 私の一番好きな〈アダージオ〉はブルックナーの交響曲第7番の2樂章です。これとマーラーの9番のCDだけは、必ず車に積んでます。あとは家族のCDばかりで、自分が運轉する時にしか掛けられません。それでも、疲れた時に、或ひは氣分が昂揚し過ぎた時に一歩下がつて物事が考へられ、後半部の上昇音型に勇氣附けられる氣がするからです。

 ワーグナーの死去が近いことを知り乍ら、この〈アダージオ〉を書き始めた爲、深い嘆きと祈りの思ひが託されてゐる氣がします。4本のワーグナー・テューバの短調の響きと、弦樂器の流れるやうな第2主題が對立して絡み、うねりとなって伽藍を築くやうに頂點を迎へます。そしてこの邊りまで書き進めたところで、ワーグナーの訃報に接したと云はれてゐます。その所爲か、祈るやうなコーダも心に響きます。

 SP盤で有名なのは戰中録音のフルトヴェングラー指揮、伯林フィル(Telefunken SK3230/32)でせう。このレコードはこの2樂章だけの單獨録音です。ヒトラー自殺の日に終日ラヂオ放送された曰くもあり、珍品盤として知られてゐます。大枚叩いて競賣で落手した時に、餘りに嬉しくて、うっかりかみさんに話してしまひ、幾らしたのか問ひ正され、しどろもどろで大汗をかきました。
 雑音は多いのですが、ちっとも安らかな感じがせず、フルトヴェングラーのブルックナーは合はないのか、不思議な演奏です。だからこそ、録音時の状況、極限状態下の緊迫した雰圍氣を思ひ起こさせます。これは5月20日(土)の「特別演奏會」でお掛けします。

 では、CDとなると、ギュンター・ヴァント指揮、伯林フィルが奥深く、深遠な祈りを感じます。グッドオールやジュリーニも聞きますが、最終的に戻るのはヴァントになつてしまつてます。




ブルックナー:交響曲第7番


Music

ブルックナー:交響曲第7番


アーティスト:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

販売元:BMGファンハウス

発売日:2000/03/23

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