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2006年6月30日 (金)

カサンドル

 ウクライナ出身のアドルフ・ムーロン・カッサンドル(1901 – 1968)のポスターからも大きな影響を受けました。バロック、ロココ、アール・ヌーヴォーに至つた私の似非ポスターも装飾に疲れ、次第に簡素で力強いものに憧れ、自然とアール・デコの作品に目が移つて行きました。そこで發見したのはカッサンドルです。後にイヴ・サン・ローランの書體も考へた巨匠です。今で云ふグラフィック・デザイナーの先驅けでせうか。

Normandie1 極端に單純化したり、ぼやかしたり、或ひは抽象化したキュビズムの影響を受けたカッサンドルの商業廣告は力強さが信頼や安心を生んでゐます。1927(昭和2)年の「北方特急」、1931(昭和6)年の「大西洋號」、翌年の食後酒「デュボネ」、1935(昭和10)年の「ノルマンディー號」等大作が續々と作られました。

 見て下さい!この豪華客船「ノルマンディー號」の安定感。初めて展覧會でオリヂナル・ポスターを原寸大で觀た時に衝撃は忘れられません。「船がでか~い」のひとこと。これ以上單純化できない程すっきりとした構圖。畫面いっぱいに船首が描かれ、その大きさを強調する爲に白波と左下、右舷下の方に鴎(カモメ)を13羽極小に描いてゐるのですね。緑色の大海原、浮世繪のやうにグラデーションが附いて上部に行く程深い碧色になる空模様。既に廢棄されてしまつた船ですが、飛鳥IIよりもこちらの船に乘つてみたかつたですね。そんな思ひも込めて、ベルランでは昨夏の特別企畫としてこの「ノルマンディー號」の料理を再現しました。

Etoilen 時代の寵兒となつて持て囃され、流行の先端を行つてたカサンドルも何時しか、時代の潮流に乘り遅れ、次第に人氣に衰へが出て、戰後は全然パッとしません。あれ程輝いてゐた1930年代の作品のやうな力が失はれてゐました。回顧展で順繰りに見ると、それは今の我々にも明らかで、本人は氣附いてゐなかつたのでせう。不遇が續いた爲に1968(昭和43)年に巴里で拳銃自殺してしまひました。

Ams85 大學4年の最後の演奏會〈救世主(メサイア)〉では、カッサンドルの「北極星號」の主題材北極星を真似て、基督生誕の星の導きとしてポスターを描きました。相變はらず下手なのですが、自分としては學生生活を締め括る大きな仕事のつもりでした。

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