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2006年6月27日 (火)

アール・ヌーヴォー

Agenso2 倶樂部の住所録の表紙、定期演奏會の廣告ポスターにチラシ、當日の立て看板等パート譜面以外にもやることは澤山ありました。上手な先輩が居た爲、尚更それ以上に描いてやろうと闘志を燃やし、率先して引き受けたものです。文化祭では、好き勝手に演奏を聞かせる喫茶店をやる爲、廣い音樂室の装飾もせねばなりません。1980年代中頃はアール・ヌーヴォーの畫家の展覧會が重なり、まともに影響を受けました。

 空間恐怖とも云ふべき、草木の曲線が絡まる装飾が畫面一杯に廣がり、獨特の文字を重ねるとそれらしい雰圍氣が出ます。學生のやることですから、お金は掛けられませんが、時間は掛けられます。じっくり描いて、切り抜いて、舞臺背景や壁に強調する模様を貼り、それなりのものが出來上がりました。自分一人では量が多いので、描いたものを同じ係の人にやって貰ふのですが、こちらの拘りは通じませんので、安直に仕上げられたり、指定した色がないからと薄っぺらの安いもので濟ませたり、なかなか巧く行かないものです。小さな表紙なら紙面に限りがありますが、大きな空間となると三次元でもあり、違ふ要素が色々必要になるものですね。

 小さな空間に多くを語らせる立體廣告としては、東京メトロ銀座線の銀座驛を一番前に降り、松屋デパートまでの地下通路に飾られた松屋の商品廣告はとても素敵です。ごちゃごちゃ並べることなく季節を先取りした小物、上品な佇まひ、小さな値札と商品名が實に品がよく粋に飾られてゐます。大きなマネキンと男性服、女性服も目を見張るものですが、小さな小窓に商品が並んだものの方が實はじっくり見るものなのですね。

 白耳義のブリュッセルに殘るオルタ博物館はヴィクトール・オルタの私邸を公開したものです。19世紀末に、産業革命により身近になつた鐵や硝子と云つた新しい素材を曲げて暖かみを出し、過剰装飾した獨特のスタイルは非常に美しく「新しい藝術」の名に相應しいものでした。ポスターだけでなく、佛蘭西の地下鐵入り口、建物にも採用され一時代を築きました。併し反面、完結し過ぎてゐる爲、自宅の場合新しく家具を入れる等手を加へることが全くできません。それ故、設計したオルタ自身も長く住みませんでした。巴里の街角にも、アール・ヌーヴォーのカフェやレストランも數多く殘りますが、お茶漬け好きな日本人には、長く座つてゐると居心地の良さを通り越して、くどく、しつこく、うんざりしてしまひます。その後の流れとして、當然のやうにすっきり見せることがアール・ヌーヴォーの後出て來たのかも知れません。

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