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2006年9月 4日 (月)

切符の入手

Karte 「バイロイト音樂祭ですか~。一生に一度は訪ねてみたいですね」とオペラファンなら思ふことでせう。10年間、毎年申し込めば必ず切符は入手できるさうです。そこまでして行きたいかと云はれると大抵の人が尻込みしてしまふことでせう。また、此処に切符がありまので、如何でせうと誘はれても、現實には「休みが取れない」「金がない」「ひとりでは不安」だとか、色々なしがらみや不都合に苛まれてなかなか行けないものです。一生に一度、自分の都合のよい時に行きたい、と考へてゐても、簡單に實現するものではありません。

 今回、お世話になつた長山さんは現地バイロイトの協會(Gesellschaft der Freunde von Bayreuth e.V.)に所屬されてゐます。日本語だと「友の會」と譯されることも多いのですが、音樂祭を資金的に支へる集まりです。金色に輝くリングの胸飾りが誇らしく見えました。切符入手に關しては長山さんのHPに書かれてゐます。1公演、1人2枚まで申し込めるので、指揮者クナッパーツブッシュ愛好家のsyuzoさんが主催するメーリングリストで1人募集を掛けられ、新參者の私としては1週間様子を見ましたが、どなたも名乘り出なかつた末に、恐る恐る擧手した次第です。

 本場を味ははずして、ワーグナーは語れません。特に《パルジファル》はこの劇場が完成してから作られ、暫くは遺言により他の歌劇場では上演すらできなかつた作品です。本當に此処で觀たいと云ふ思ひがどれだけ強いか、そこに掛かつてゐるのでせう。法外な値段で買はされるツアーも排除され、運良く當日賣りで買へたとしても、必ず旅券(パスポート)の提示も求められる程、切符の管理はゲルマン的律儀により徹底されてゐます。切符には購入者の名前と住所まで印刷されてゐます。餘つたからと言つて、轉賣でもしようものなら、もう二度と切符は手にできないことでせう。畫像では住所の部分は個人情報の爲、消してあります。

Bhorzschnitt 長山さんは以前2枚入手しても、結局1枚餘つたので返却したさうです。この誠實さが大事なのですね。轉賣でもしようものなら、きつと10倍の或ひはもっと高額な値段が附いたことでせう。でも、それではリヒャルトの遺志に反します。人々の爲に無料で公演を開きたいと考へてゐたワーグナーですから、協會も特にこの違法切符を嚴しく取り締まつてゐる譯です。

 私もこんなことがありました。バイロイトの街外れにワーグナー専門の骨董屋「ワーグナー骨董 ハニー・コペッツ」と云ふ店が在り、そこで100年前のこの版畫を求めました。《トリスタンとイゾルデ》の第2幕の〈愛の二重唱〉を描いた、極細の珍しいものが手に入つたと意氣揚々と引き揚げ、街まで戻り飲物を買はうとして財布を見ると、何故か現金が多いのです。暫く考へて、支拂ひの際に、話し込んでゐた爲お釣りを間違へてたとやっと氣附きました。このままにしてもよかつたのですが、また何時かこの店を訪ねたいし、日本人は不誠實だと思はれるのは嫌なので、戻つて返金したのです。非常に喜んでくれただけでなく、お禮にと自前で造らせたエスプレッソ用の珈琲杯を下さいました。久し振りに正直者が得をした感じがして、お互ひ氣持ちよかつたです。

Demicup また、今回は同じワーグナー好きとは云へ、通常の生活では接點のない人と知り合ひ、切符を分けて頂けた不思議。ネットの恩恵此処に極まりと云ふ感じです。syuzoさんありがたうございます。

Syuzo's Homepage

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