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2006年11月16日 (木)

レッコ

 伊太利全土でフォカッチャ(focaccia)が食べられてゐます。バールや立ち喰ひ所で食べられる、平たくて細長いパンのことで、見た感じは殆どピザ生地です。オリーヴの實が入つたものや、肉や野菜を挟んだり、通常はサンドヰッチ用に使はれ、挾んで一寸表面をパリッと焼くので腹ごしらへにはもってこいですね。
 特にこのジェノヴァやポルトフィーノ近邊の港町ではチーズを挾んで焼いたフォカッチャ(Focaccia col formaggio)は名物のやうです。紙のやうに薄く伸ばした生地の上にドンとチーズを載せ、もう一枚の薄い生地で挟み、伸ばして焼いたものです。薄いピザの間にチーズが挟まつてゐると考へて下さい。

Dh000183 我々が行つたところは、ポルトフィーノから程近い港町レッコ(Recco)の「リストランテ・ヴィトゥリン(Ristrante Vitturin)」です。此処は何と創業1860(万延元)年から家族經營を續ける老舗でした。ところが行つてみると、豫約が入つてゐないと云ふので、急いで電話に出たコックの息子さんを呼んで確かめたら、どうも書いたメモを無くしてしまつたらしいのです。帳場のお母さんは始終怪訝な顔をしてゐましたが、我々は豫(あらかじ)め翻譯した日附の入つた献立表を見せると、これが動かぬ証拠となり、目出度く着席できました。
 この店の面白いところは、地下の厨房から一階のホールまで水車のやうな圓盤が回り、料理が載せられて來ることです。そして、晝食にチンクエテッレで食べ過ぎたことを傳へて、量は極力減らして貰つて晩餐の開始です。平日にも拘はらず、小さな子供を連れた家族連れ(それも21時過ぎからの夕飯!)、カップルは靜かに見つめ合ひ、男同士で顔を近附けて大きな聲で喋つたり、或ひは新聞を讀み乍ら一人でゆっくり食事する人等、地元の色々な客層で賑はつてゐます。

Dh000184 やって來ました、チーズを挟んだフォカッチャ!直徑50糎はあるかと思ふやうな圓型の木の臺に載せられて、カメリエーレが近くで切り分けてくれます(上圖)。ひとり20糎四方が二枚、もうそれで十分な量です。とろりと溶けたチーズとパリッと焼けた生地が絶妙に口の中で混じり合ひ、お代はりが欲しくなりますが、まだ前菜なので後に續く料理の數々を考へると、とても手が出ません。暫くするともう一枚巨大なフォカッチャをすぐ隣りで切り分け始めました。よく食べる客が居るのだなあと思ふと我々の卓子へ持つて來るではありませんか!殘念乍ら、これはもう遠慮したいと傳へると、先程のは8人前であつた爲、12人では足りないと急いで持つて來たとのことでした。「えっ、もう要らないの?」カメリエーレが逆に吃驚して、我々のバスの運轉手が氣を利かせて、一部お持ち歸へりにすることになりました。

 この後は手捻りの短いパスタに自家製ジェノヴェーゼソース(trofie al pesto)、魚料理一品、デザートと矢張り完食ならず。高度成長期に昭和一桁の親から、殘さず食べることが美德だと躾られた自分でも、體を壊してまでは食べられません。こんなに遅い時間にたっぷり食すのですから、朝はビスコッティをカプチーノに浸して口に入れるだけと云ふのも頷けますね。

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