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2006年11月24日 (金)

ラ・スカラ

Dh000445 伊太利語の「scala」とは「階段」「梯子(はしご)」と云ふ意味ですが、「ラ・スカラ(la Scala)」と定冠詞を附けて呼ぶ場合、歌劇場の「ミラノ・スカラ座」を指します。改装も終はり再開した歌劇場には從來通り「歌劇場博物館」が併設されて色々縁の品々を見ることができます。前回來た時は、移轉先で假營業してをり、蓄音機の數々が見られましたが、今回その陳列はなく、階段には昔の告知表(ポスター)が續き、名歌手、作曲家の胸像が並んでゐます。
 これはプッチーニの遺作《トゥーランドット》初演時のもの。アリア〈誰も寝てはならぬ〉はトリノ五輪、荒川靜香選手のイナバウワーと共に、すっかり有名になりました。トスカニーニが「マエストロはここまでで筆を絶ちました」と言つて補筆補完された部分を演奏せずに指揮臺を降りた有名な逸話が殘るものです。でも目をつ近附けてよく見ると、複製品でした。本物は倉庫の奥深くに仕舞ひ、略奪破損の危險のある展示には複寫を使つてゐるのでせう。

Dh000431 本番前の稽古や豫行演習がなければ、歌劇場内も一部箱席(ボックス・シート)から見ることも可能です。丁度、舞臺装置の組み立てをしてをりました。昔は貴族の世襲制の座席であつた3列6席の狭い空間です。ヴィスコンティの《夏の嵐》冒頭、天井桟敷から赤白緑の紙を蒔き、「伊太利萬歳!」と叫ぶ民衆を見上げたのは、ヴェネツィアのフェニーチェ座でしたが、かう云ふ席です。或ひは若い燕役のキアヌ・リーヴスが新鮮であつた《危險な關係》で、グレン・クローズが不適な笑みをこぼすのも、かう云ふ歌劇場です。本物だけがもつ優雅さや重厚感があり、かう云ふ歌劇場は舞臺だけでなく、觀客席でもドラマが多くあつたことでせう。
 管理人さんに「撮影禁止ですが、できれば…」と訊いて貰ふと、「1枚位ならOK」と實に寛容なお言葉。こちらは擴大解釈して、何処でも氣に入つたものを1枚づつ、こっそりと、勿論自己主張の強いフラッシュは焚かずに撮りました。9月ま30日までであつた、館内圖書館部分の「スカラ座に於けるモオツァルト上演」の特別展示が何故か、引き續き開いてゐて、昔の好演ヴィデオテープが回り、舞臺衣裳や舞臺模型が飾られてゐました。住んでゐたらかなり不便でせうが、この、ラテン的ないい加減さは好きです。



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コメント

初回の「夏の嵐」、イタリアの作家の「官能」という小説を題材にしたもの。
しかし巨匠ヴィスコンティが描きたかったのは「官能」自体というよりも、長い苦難の末にやっと統一に向かうイタリアの歴史、それを特にヴェネツィアの最期に凝縮したかったのではなかろうか。要するに古いイタリアへの挽歌。
冒頭の場面のバックで演じられているのは、ヴェルディのオペラ「(イル)トラヴァトーレ(=吟遊詩人)」。オペラの筋書きは、男女の三角関係と復讐劇が絡む愛憎劇だが、この時期、ヴェルディ(Verdi)の名は、初代イタリア国王となったヴイットーリオ・エマニュエル・2世(Vittorio Emanuele il Re d’Italia )の頭文字と一致し、イタリア人の愛国心を煽る。

投稿: 杉原 啓史 | 2006年11月25日 (土) 00時12分

杉原 啓史さん、丁寧なコメントありがたうございます。
「夏の嵐(Senso)」はいい映畫でした。歴史絵巻としても素敵でした。特に音樂の使ひ方が素敵で、「トロヴァトーレ」の場面と云ひ、ブルックナーの7番と云ひ、忘れられません。

投稿: gramophon | 2006年11月25日 (土) 20時24分

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