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2006年11月29日 (水)

郵便配達は二度ベルを鳴らす

 今晩放映される映畫《郵便配達は二度ベルを鳴らす》はヴィスコンティ最初の長編映畫です。1942(昭和17)年制作、113分。原題は「妄執(Ossessione)」。原作の愛慾小説『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の作者ジェイムズ・ケインから戰時中の爲映畫化の許可が得られず、亞米利加では長いこと違法作品でした。それ故、紐育での初演は1976(昭和51)年になつてからのことです。

 1981(昭和56)年にはジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラングでも映畫化されてもゐます。併し、白黒とは云へ印象深いのはこのヴィスコンティ作品の方でせう。舞臺は亞米利加から北伊太利に移して、自由に直してゐます。
 片田舎の食堂に流れ者ジーノが現れ、美人の妻ジョヴァンナは年の離れた夫よりも一目見ただけで、この若い男の虜になつてしまひます。夫を説得して雇ひ入れて貰つてから、夫の居ない時を狙つて誘惑すれば、身體を持て餘してゐるジーノはすぐに應へます。幾度も情事を重ねる内にふたりで驅け落ちを計畫しますが、それまでの恩を思つたかジョヴァンナは食堂へ引き返し、ジーノは元の風來坊生活です。そこで、大道藝人と知り合つたジーノは仲間となり、港町でいつかの食堂の夫妻と出くわし、また戀の炎が燃え上がります。
 たうたう夫が邪魔になつたジョヴァンナは夫殺しを決意して、自動車事故を装つて共謀して殺してしまひます。完全犯罪を成し遂げた筈のふたりですが、ふたりだけとなるとうまく行かず、此処を捨てて餘所で再出發しようと企てます。自動車に乘り込み、ふたりで未來を摸索中、交通事故でジョヴァンナが死んでしまひます。しかも、夫を殺した時と全く同じやうな状況となり、偶然の事故だと信じて貰へないジーノは警察に連行されるのでした。

 土埃の舞ふ土手は穀倉地帶のポー河周辺なら何処でも見られる風景です。然も、日差しが強い。汗まみれのランニングシャツにジャケットを羽織つたジーノは如何にも肉體勞働派の逞しい體型。筋骨隆々でギラギラする位男っ氣がありますが、不潔で汗臭ささうです。それに比べると食堂の主人は小綺麗かもしれませんが、腹の出た中年男で然も亭主関白。口うるさい主人ですが、喉自慢ではヴェルディのアリアを歌ふところは、さすが伊太利です。若い妻としては、退屈してゐる最中に突然白馬の王子が現れたやうに感じたのかも知れません。玉簾(タマスダレ)の間から流し目で誘惑するところなど、大人の女は恐いと感じます。惚れたと思つたら、すぐに口説く。氣持ちが高まれば何処でも情事を重ねる!嫉妬に狂へばすぐにナイフを取り出す。直情径行型、現世を謳歌するラテンの血は熱し易く醒めやすい。それで居て、人ごとでない怖さを感じます。



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