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2006年12月 7日 (木)

寫眞で讀む僕の見た「大日本帝國」

 先日、イッセイ尾形主演のロシア映画『太陽』を見ました。アレクサンドル・ソクーロフ監督が終戰前後の東京を舞臺に、昭和天皇裕仁の私的な領域を中心に「人間宣言」までをかなり日本人の心情に近い形で映像化しました。内容が内容だけに日本公開すら危ぶまれてゐたものですが、現人神として崇められた人間の苦悩を静かに淡々と撮ってゐます。戰後60年經つても、日本人自らメガホンを握れない現實も感じましたが、まだまだ先の大戰は隠蔽してゐるところが多く、表立つて語るのが憚れる雰圍氣が拭ひされませんね。

 西牟田靖著 『寫眞で讀む 僕の見た「大日本帝國」』 情報センター出版局 は、既刊『僕の見た「大日本帝國」―教はらなかつた歴史と出會ふ旅』の姉妹本として出されたもので、嘗ての日本の領土を歩き、寫眞に撮り、記憶と痕跡を辿り、日本と亞細亞の過去と現在を見詰め直し、そして未來への一歩を踏み出す土臺となるべき本です。表紙に〈亞細亞號〉の朽ち果てた姿の寫眞と、日章旗を象(カタド)つた意匠に目が止まり、手にした本です。著者は私よりも若い1970(昭和45)年生まれ。同じやうに近代日本に興味を持つ若人が居ると思ふと嬉しくなります。

 樺太(カラフト)の荒れ果てた神社、臺灣(タイワン)の温泉、滿州の計畫都市新京(現長春)に殘る帝冠様式の建物、七三一部隊の蹟等侵略の象徴や、或ひは南洋諸嶋(ミクロネシア)に殘る遺構… 極端な反日感情から現地語になつた日本語の紹介まで、作者自ら様々な遺跡を歩いた記憶です。ご年配の方なら現在の見るも無惨な姿に心を痛めるかも知れませんが、背伸びをし、無理をした植民地支配の歴史を見つめ直すいい切掛になることでせう。過去を知り、現状を知ることによつてこそ、新しい未來を築けると思ひますが、感情の溝はなかなか埋まるものでもない現實も教へてくれます。



写真で読む 僕の見た「大日本帝国」


Book

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著者:西牟田 靖

販売元:情報センター出版局

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僕の見た「大日本帝国」―教わらなかった歴史と出会う旅


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