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2006年12月27日 (水)

今年の失敗

 この一年を振り返つて、今年一番の失敗を思ひ出さずにはいられません。それは安易にタクシーを利用したことです。

 普段、都民の足は地下轍ですから、地中奧深い大江戸線は別として、成る可く昇降機を使はず階段を利用するなど心掛けてゐます。併し、旅行に出ると、なくてもいいのにあれば便利なものも持つて行つてしまひ、結果として大荷物となり、それを引張るのが億劫で仕方ありません(體力なし)。それ故、旅先では割にタクシーを利用してしまひます。
 近距離や子供連れなら仕方ないのですが、今夏ひとりでニュルンベルクの飛行場へ着いた際、初めて降りる空港でまごつきました。私が「秋を連れて來た」と伯林の友達に云はれる位、前の週までの猛暑は去り、すっかり涼しくなつてゐた頃です。翌日の《彷徨へる和蘭人》に間に合ふやうに、餘裕を持つて來たので、急ぐ必要はありません。此処からはバスか市電で中央驛へ出て、鈍行に乘り換へてバイロイト行く筈でした。併し、昇降機で地階へ降りても大荷物に、皺になりたくない略式夜會服(スモーキング、タキシード)を手に持つて移動するのがたいへんです。伯林でお土産は置いて來たので實はそんなに重くはない筈ですが、既に空港の建物を出た段階で大汗もかいてゐましたし、怪しい雲行きで(この時點で言ひ譯を探してゐました)、安直にタクシー乘り場へ向かひます。訊けば、バイロイトまでも飛ばしてくれると云ふぢゃないですか。値段も100ユーロ位ならいいかと、無理矢理自分を納得させて乘り込んでしまふと、あとは勿論極樂!。贅澤は素敵です。

 伯林の早口に聞き慣れたすぐ後にバイエルン地方訛りは聞き辛いけれど、陽氣な運轉手と雑談してゐるうちに、突然の豪雨で前が見えません。時速150粁以上で走つてゐた自動車専用道路(アウトバーン)は一斎に徐行運轉となり、「音樂祭だけでなく、お客さんは憑いてるねえ。」と云はれるとそんな氣もして來ます。「わざわざ日本からワーグナー聽きに來るのもてえへんだあ。オラは一度も行つたことはねえなあ」としみじみ言はれ、ふと考へるとタクシーで15,000圓も乘るのは初めてです。
 突然現實に引き戻された感じで、都内から大船か藤澤邊りまでの距離がありますから、當然と云へば當然です。東京でそんなことをしたら罰が當たる!凄い贅澤をしてしまつた罪惡感に苛まれ、伯林では友人宅に泊まつたから宿泊代が浮いた分使つてゐるのだと、無理して納得させてる自分。その上、江戸ッ子の見榮ッ張りが出て、せこい日本人になりたくなかつたので、端數切り上げだけでなく、たっぷり飲み代(チップ)をあげ、太ッ腹を見せてしまひました。勿論、運轉手は小雨の中扉を開けて、でかい鞄をフロントまで運んでくれたのは云ふまでもありません。
 優越感に浸つた短い時間と、結局120ユーロも拂つて無駄遣ひをした後悔とで、深く心に殘る阿呆な出來事でした。

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コメント

確かに、タクシーで120ユーロは痛いですね。
でも、大雨で夜会服がずぶぬれになってだめになっていたかもしれない、と思えば出費がかえって小さくすんだ、ともいえますよね。

投稿: Tiberius Felix | 2006年12月28日 (木) 10時45分

服が濡れずに濟んだ、荷物を運ばずに濟んだ、早く到着した等よい點も色々あり、高いだけのことはあつた筈なのですが、一泊分をタクシーで使つてしまつたと云ふ妙な罪惡感を感じるせこい自分です。平氣でSP盤にはそれ位拂ふのですがねえ。

投稿: gramophon | 2006年12月28日 (木) 11時03分

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