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2007年2月26日 (月)

怪しいこと

 普通は毎年夏休みに入ることから、恐怖小説を讀み始めます。『新耳袋』シリーズは特に恐ろしいもので、物語としては取材した實體驗が99話あるのですが、前書きや後書きを含めて一氣に讀むと丁度100話となります。それ故、一晩で讀破すれば必ず「怪」が訪れる仕組みです。全10巻ありますので、氣になる方は是非どうぞ。

 なぜ百話かと云ふと、江戸時代の故事に習つてゐる譯です。元の『耳袋』も江戸時代に聞き囓つた得たいの知れないことだとかを書き留めたものでしたが、『新耳袋』は現代に身近に起こつたことを著者の二人が取材して、ひとりがもうひとりに語つて聞かせ、それを文字としたものです。古來より傳はる「百物語」は蝋燭を百本立てて、一話終はる毎に消して、つひに最後の一話を語り終えて火を消すと、必ず「怪」が訪れるのです。それで大奥の局同士で流行り、血生臭ひ事件を巻き起こして以來、暫く禁止されたのだとか。さう云はれるとやってみたくなるもので、森鷗外も短篇に書いてゐます。

 季節に關係なく、ふと本屋で目にするとつひ手に取つて見て買つてしまひます。恐くてトイレにすら夜中に行けなくなるのはわかつてゐるのですが、氣になり出すと寝る間も惜しくて、朝まで一氣に讀んでしまひます。かう云ふ本はどうもお仲間を呼ぶらしく、非常に恐ろしい。讀んでゐる途中何度も後ろを確認したり、鏡に餘計なものが映るんではないかとおののきながらです。昔は見えない筈のものが見えた體質でしたが、親に否定され續けて見えなくなりました。併し、近年素直に事象を觀るやうになると、どうも氣配だとか、氣懸かりであつたり感じます。具體的な形として見えなくても、何かが存在してゐるやうな感じでせうか。それも、かう云ふ本を讀み出すとラヂオの周波數がすうっと合ふやうに波長が合つてしまふやうです。

 一氣に『新耳袋』を數刷、百話以上まとめて讀むと恐怖は増しますが、何も「怪」は訪れませんでした。仕事の合間、休憩時間に電氣を消してひとりで讀んでゐると恐いの何の。2~3時間ですっきり讀み終へた途端に從業員用の扉をドンドン叩く人があり、もう吃驚して聲を上げてしまつたこともあります。間髪入れずと云ふ譯には行かず、息を殺して、扉を恐る恐る開けてみると、案の定誰も居ません。すぐ隣に座つてゐる守衛さんも氣附いてゐません。でも、何か起こればこれ以上のことはないと安心するのです。



新耳袋〈第1夜〉現代百物語


Book

新耳袋〈第1夜〉現代百物語


著者:木原 浩勝,中山 市朗

販売元:角川書店

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