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2007年2月 7日 (水)

未消化

 うちのお客さんのブログに阿川弘之著『食味風々録』新潮文庫が紹介してあつたので、早速讀んでみました。もう何年も前かの觀艦式で阿川さんをお見掛けしたことがあります。我々は避難民のやうにして見學しますが、阿川さんはご招待であつたのでせう。士官室に招かれて、這入るところでした。さすが元帝國海軍軍人だけあつて、上背のある立派な背格好でした。

 さて、この本は随筆を纏めたものですが、その中に向田邦子さんとの對談の思ひ出が「ひじきの二度めし」に語られてゐます。「美味に就いて」の樂しいお話しで、珍しい食材を知つてゐるかと云ふことになりました。阿川さんは「蚊の目玉」と「栗鼠(リス)の糞」と云ふ珈琲を出したら、向田さんが「ひじきの二度めし」を出して來たのです。ネタバレとなりますので、讀んでみたい方はこの先はご遠慮下さい。然も、下品な話しです。ご注意下さい。

 中華材料のある云はれる「蚊の目玉」は蝙蝠(カウモリ)の糞を集めて濾して、未消化に殘つた蚊の目玉を集めたものがあり、非常に珍重されるさうです。「栗鼠の糞」とは、戰前の蘭領印度支那、ニューギニア嶋の最高の珈琲は、珈琲の花の萎みかけを栗鼠が好んで食べるのださうで、既にその中には小さく結實した粒があるのですが、未消化で排出されるので、それを土地の人が拾ひ集めて乾かし焙煎したものだとか。どうも動物の體内を潜り抜けることで、美味しくなるのでせう。
 そこで「ひじきの二度めし」となりますが、ひじきも殆ど消化されず、一寸ふくらんで排泄されるので、それを集めて、洗つてもう一度煮たものが『ひじきの二度めし』ださうです。海邊の貧しい人々には、ひじきは二度味はへる貴重な食材であつたのでせう。然も、二度目の方が美味しいと云ふ話し。本當かどうかも判りません。食べてみたいやうな、恐ろしいやうな「机以外の四つ足、飛行機以外の飛ぶもの」を食す中華料理を考へると滿更ぢゃないかも知れません。でも試してみたくはないですなあ。




食味風々録


Book

食味風々録


著者:阿川 弘之

販売元:新潮社

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コメント

遅ればせながらのコメント失礼。 風々録の件の箇所はなぜか倅が気に入って話に出すので嫌われています。経験したいようなしたくないような、口に入れた後に云われればまあ仕方ないのかも知れません。
何度読んでも楽しませてくれる本です。

投稿: smatu | 2007年2月10日 (土) 18時39分

 うちのシェフ曰く、「蚊の目玉」は口當たりだけで味はないだらうし、「栗鼠の糞」にしてもローストするから判らないかも知れないけれども、「ひじきの二度めし」は勘弁して欲しいと。自分で試みる勇氣もなく、出されても食べる勇氣もないので、私もほんたうのグルメではないのでせう(笑)。口に入れてから、知らされても吐き出さない自信はありますが…

投稿: gramophon | 2007年2月13日 (火) 19時45分

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