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2007年2月 6日 (火)

下手物

 澁谷の飲み屋街に下手物を食べさせる店が在りました。1980年代前半のことですし、店の名前も、細かい地形も全く覺へてゐませんから、既に無いと思ひます。普通な捨てるやうな部所や、蝗(イナゴ)の佃煮、蜂の子等珍しい食材を下手物と云ふのでせうが、そこは卑猥な形に拘つた店でした。下品な内容ですので、紳士淑女諸君は讀まないでをいて下さい。

 そこの焼きソーセージは、太めの立派な長さも備へたフランクフルター・ソーセージは焼いてあり、反り立つ形に盛り附けられ、上の方にはご丁寧にベーコンが巻かれ、根元にはキャベツが二つにこんもりと盛られ、浮いたソーセージの下に白いフレンチドレッシングが垂らしてあるものでした。一目見ただけで、女の子はキャーキャー言つて喜びます。男共は密かに自分のものと比べて、痛さうだからがぶりと頭から誰も喰ひ附かうとしません。それで、「あたしが!」大きな口を開けて、ニコニコ顔の彼女が口に入れると、これまた大騒ぎをしたものです。
 赤貝のお刺身なんかも、それはそっくりに盛り附けられ、真ん中に紅生姜まで入る懲りやうでした。學生が訪れる店ですから、そんなに高い所ではありませんでした。薄汚い小上がりの疊も毛羽立つたところに、薄い色の變はつた煎餅座布團も一緒に記憶に殘つてゐます。

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