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2007年2月22日 (木)

味のすべて

 神田の街を歩いてゐても、戰前のレコード型録や音樂本、それに料理本はつひ手を伸ばしてしまひます。讀んでる割に全然身になつてゐないとかみさんには叱られてますが、50年も前に書かれてゐても、本質は全く同じだと云ふことも多くて驚かされます。

 讀賣新聞婦人部編 『味のすべて』 池田書店 1958(昭和33)年發行 は田村魚菜や天皇の料理番、秋山德藏だとか、様々な専門家が述べる料理の話題です。面白いのはまだ普及してゐない料理の説明とかでせうか。項目と副題を見てるだけでも

 コーヒー 最高の風味はマタリ
 ブドウ酒 料理と切り離せない
 ウヰスキー 名品のつくる”ブレンド”

と書かれてゐるやうに、旬は何かとか、最高のものとはどんなものか、がご婦人向けに解り易く書かれ、驛賣りの辨當なんかでもかなり辛辣な批判がされてゐます。東海道線では横濱の「シユウマイ辨當」、小田原の「おたのしみ辨當」は及第點ださうです。祖母と熱海へ行く時に小田原の「おたのしみ辨當」を買つた記憶があります。
 新橋を出て、丁度小田原くらいでお晝となり、驛に到着すると窓を開けてをいて、大聲で辨當屋さんを呼んでお茶と一緒にこの幕の内辨當をよく買ひました。小學生高學年になると、ホームを走つて買ひ、ベルの中を一番近い扉から列車に乘り込むスリルも味はひました。そして、新幹線に乘り込む時は、いつも私は「チキン辨當」でした。2段重ねの紙箱で上には一寸柔らかくなつた唐揚げ、下には豌豆を散らしたケチャップライスで、たいして旨くもないし子供には多いので必ず殘してしまひましたが、決まってこれを強請つたものです。横濱の焼賣も辨當ではなくて、特製焼賣だけ買ひ求めたことも度々ありました。

 本の中で、

 「西洋では、チーズは毎日の食卓に欠くことのできぬオカズですし、また調味料でもりちゃうど日本のミソに相當するものです」

 こんな表現を見ると微笑ましくなつてしまひます。村上信夫ムッシュは戰前にあつたのは、瑞西のエメンタールやグリュイエールのやうな硬質タイプ位でカマムベールなんか見たこともなかつたさうです。今は金さへ出せば、世界中のものが食べられるのですから、日本も贅澤になつたものです。

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