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2007年3月27日 (火)

てふてふ夫人

 日曜日は當日券があることを思ひ出し、チケットぴあで購入して、新國のマチネへ。初めて觀る〈てふてふ夫人〉でした。カラスとカラヤン&スカラ座のCDに慣れ親しんではゐましたが、今まで一度も觀る機會もなく、雨の中並んでZ席を確保しました。4階左7番。所謂天井桟敷で側面の席故、舞臺は乘り出さないと觀られません。1,500圓故、文句は言へませんので、疲れたら背もたれに背中を附けて天井仰いで、音樂だけに浸る至福の時間。

 半圓の舞臺下手から上手へ階段が附き、上部奧には亞米利加の軍艦が入港してゐる証の星条旗がはためいてゐます。中央には障子と柱だけの簡素な家。上手から半圓に沿つて下へ下る坂。丘の中腹の家と云ふ設定のやうです。この間、〈和蘭人〉でがっかりさせられたオケでしたので、全く期待はしません。指揮者は若杉弘。雰圍氣は20年前と全く變はりないのに、颯爽と舞臺に上がるどころか、拍手が始まっても一向に姿を見せず、やきもきしてゐたら足取りもおぼつかない老人になつて居ました。まだ座らずに指揮する姿は以前と同じで、優しい眼差しを舞臺に投げ掛け、丁寧な指示を出してゐました。序曲から、ちゃんと音は出てます。

 舞臺は簡素でも、小道具が光りなかなか憎い演出(栗山民也)です。位牌、十字架、鏡、櫛、煙草盆、化粧道具、人力車、それだけでも明治の雰圍氣が出るので吃驚です。

 ジュゼッペ・ジャコミーニのピンカートンはご高齢故、双眼鏡で覗くとがっかりですが、聲は若々しく1幕最後の二重唱等、蝶々夫人(岡崎他加子)とも息が合つてました。クリストファー・ロバートソン演じるシャープレスは巨漢を生かして、品のある領事らしさ出て聲もよく通り抜群でした。他の歌手も粒が揃ひ、合唱のよく頑張つてました。

 併し、矢張りダメなのはオケ。生温い伴奏で、3年ぶりに長崎に寄港したピンカートンを今や遅し、と待ち續けて夜を明かす〈ハミング・コーラス〉の場面が泣けません。15歳で嫁入りして、ずっと信じ切つて、3年間も待たされた蝶々夫人の再會に向けた高まる気持ちと、なかなか現れない焦りと、兎に角待つだけの女性の儚(はかな)さが靜かなコーラスでぐっと感情移入される場所なんですが、なんとも中途半端な感じに終はつてしまひました。もっと激しく、強弱を附けて、拍子(テムポ)も揺らしてくれてゐたら、甘く切ない「旋律(メロディー)の天才」プッチーニらしさが出たと思ひます。

 儚さと力強さを表現したカラスとカラヤンの変幻自在な指揮で、どこまでも綺麗で美しく、甘い演奏のCDが矢張りお勸めです。カラスの聲だけで、もう痺(しびれ)れます。

 実在の蝶々夫人が誰か色々探られて來ましたが、結論から云へばグラバー邸で有名な蘇格蘭(スコットランド)商人トーマス・ブレイク・グラバーの妻、ツル本人や彼女から聞いた武士の話し等から日本女性の心像(イメージ)を編み出したとプログラムにありました。1904(明治37)年初演、日露戰爭開戰の年です。今度、演奏して頂く「プレイエルピアノ」が造られた翌年に當たるのですね。




プッチーニ:蝶々夫人 全曲


Music

プッチーニ:蝶々夫人 全曲


アーティスト:カラス(マリア),ミラノ・スカラ座合唱団

販売元:東芝EMI

発売日:2002/05/22

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