« 骨董 | トップページ | 真贋 »

2007年8月 9日 (木)

いい仕事

 青山通りから六本木通りに抜ける骨董通りに、以前古伊万里を扱ふ「からくさ」と云ふ店が在りました。テレビですっかり有名になつた此処のご主人、中島誠之助さんに一度だけお遇ひしたことがあります。近所の友人宅でパーティーがあり、そこで料理を取りに行く際、人が多くて行き來ができず、お互ひ譲り合つて會釈しただけでした。只、それだけですが、まだテレビに出始めの頃であつたのでせうか、その後、中島さんの回りに自然と輪ができて、和やかにお話しをされてました。私は一寸遠い所に居たので、話の内容まではわかりませんでしたが、何とも人柄の良ささうな方だとお見受けしたことだけはよく覺へてゐます。

 骨董のことで本を探してゐたらありました。中島誠之助著 『骨董屋からくさ主人』 角川ソフィア文庫。以前月刊誌に書いたものを纏め、書き足し、再考改定したものですが、修行時代から獨立した頃はまだ東京の地名、番地も舊名で、都電の走る頃からの出逢つた人や通り過ぎた品々の思ひ出が語られてゐます。本物を見極める真贋の目を持つまで、幾つもの本物に接しなくてはならないことや、ひどい僞物でも本人が「ホンモノ」だと信じてるものには、決して「ニセモノだ」と本當のことは傳へない方がお互ひの爲であつたり、茶道を通じた立ち居振る舞ひ、物腰、人の年輪が本物を育て、また本物に人も安らぎを得て、人が育つて行くかが書かれてゐます。

 掘り出しものを見附けて、沫行くば大儲けを企むやうな輩のところにはロクなものが來ない。ニセモノを掴まされたら、それを買つた奴がいけないと云ふ業界の常識。昔は明治生まれの大店のご主人が懐の深い商賣をしてゐたとか、素人には吃驚するやうな話が淡々とした語り口で語られるので、すっかりファンになりました。古伊万里を世に認めさせ、骨董通りの名附け親だけではなかつたのです。本を書かせても「いい仕事をしてました」。でも、閉店する前から「からくさ」はいつも閉まってゐたやうな氣がします。




骨董屋からくさ主人


骨董屋からくさ主人


著者:中島 誠之助

販売元:角川学芸出版

Amazon.co.jpで詳細を確認する


|

« 骨董 | トップページ | 真贋 »

コメント

ニセモノはなぜ、人を騙すのか? という中島誠之助氏の新版が面白そうだったので今日買ってきました。(角川) 骨董界の内幕も政治と同じくなかなか難しそうです。
一歩下がって野次馬で楽しみます。(汗)

投稿: smatu | 2007年8月 9日 (木) 23時03分

新刊が出たのですね!野次馬のつもりが、SP盤だとたいしたことのないのに、氣が附けば大枚叩いてたりするので、困ります(汗)。

投稿: gramophon | 2007年8月10日 (金) 11時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 骨董 | トップページ | 真贋 »