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2007年8月30日 (木)

松の廊下

 昭和16年、真珠灣攻撃を前に萬事戰爭に向かつてひた走る頃、映畫會社も合併させられ、もうフヰルムの配給も終はり、これで映畫作りも最後だと思はれた際、國策映畫として溝口健二が撮つたのが『元禄忠臣藏』です。當時の映畫人たちは、時代考証を重ね實寸寫實主義を貫き、野外セットで江戸城「松の廊下」をきっちり再現してしまひました。
 この夏、家族も出拂つたのを幸ひに、ツタヤでDVDを借り、枝豆茹でて麦酒を用意し、じっくり腰を据えて觀ることができました。喇叭が高らかに鳴り渡り、縱書きの楷書で始まります。役者関係者の紹介が巻物のやうに左から右へと流れ、のっけから松の廊下です。それもじっくり仔細を見せるでなく、廊下の曲がり角に置かれたカメラは單にロングショットで全體を嘗めるやうにゆっくり回り出します。すると、上手から吉良上野介が浅野内匠頭を罵倒する聲が聞こえて來ます。何故、あの田舎侍に訊くのだと叱ってから、吉良さんは廊下を曲がり、下手奧へ歩いて行きます。そこへ上手の小さく見えてゐた内匠頭が走り寄り、後ろからズバッと斬り附けます。それから「殿中ですぞ」の聲と共に、坊主や附き人等大勢がどわ~っと出て來て、二人を引き離し、あれよあれよと云ふ間に吉良さんは連れて行かれ、内匠頭は取り押さへられます。この冒頭の場面だけでも見應へ十分。あっと云ふ間に引き込まれます。此処にチラッと畫像あります。

 内匠頭の切腹、赤穂城の受け渡しがあつて、大石内藏助が山科へ籠もるところで前編が終了。最後の場面もずっと長回しで、親子の別れ、籠の見送り、大石主税が内藏助と目が合ったと同時に涙を抑へ、家に向かつて走り出すところまでワンカット。じっくり見せてくれます。ぼそぼそ聲で聞き取り辛いかも知れませんが、文句なしの大作でした。



元禄忠臣藏(前篇・後篇)


DVD

元禄忠臣藏(前篇・後篇)


販売元:松竹ホームビデオ

発売日:2006/11/22

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