« 唐津焼 | トップページ | いい仕事 »

2007年8月 8日 (水)

骨董

 實際に描いてみたり、美術館で本物の古い磁器や陶器を見たり、焼き物に触れると自然と普段使ひの他に「骨董」にも興味が湧きます。勿論、資金があればSP盤を買つてしまふので、どんなものなのか、と思ひ、勸められるままに 村田喜代子著 『人が見たら蛙に化(な)れ』 朝日文庫 を讀みました。
 大分縣郊外の通稱「荒田のドロボー市」に出入りする3組の男女が幻のお寶を探して、盗掘、海外出張をして、傷物、贋作も取り混ぜて、客の好みのもの選り分けて商賣して行く骨董屋に就いて描かれてゐます。結構詳しい解説が織り交ぜてあるので、素人が讀んでも、骨董家業の苦勞が忍ばれます。小説の題は大事な骨董なので、誰にも渡したくない、もしも誰かよそ者が箱を開けて見たら、蛙に化けてくれと云ふ話から取られてゐます。

 英國ではポート・ベロウ通りの骨董市が出て來ますが、倫敦在住の際はよく通ひました。初めて買つたコロムビアの携帶蓄音機やギャング映畫に出て來るやうな耳に當てる部分を持つて、上部に向かつて話す電話なんか、此処で手に入れました。それに蓄音機の針も高架下の同じ出店でいつも買つたものです。矢張りどの店も幾度も通つて顔を覺へて貰つてからでないと値引きをしないことだとか、實體驗で知つたことが、懇切丁寧に描かれてゐます。それは日本の骨董屋も同じなのでせうし、いきなりぶらりと來た客から「蓄音機が聞きたい」と云はれても店側としては困惑するだけです。SP盤は身を削る譯ですから、よく知らない人に對して氣輕に掛けられません。自分1人で聽くことも勿體ないのですから、どれだけ音樂が好きなのか、誰かの紹介なのか、見極められない奴は胡散臭く見えるものです。それでも聞きたいと云はれれば掛けますが、よく知らない相手なので、適當に音が出るだけのものしか掛けません。幾度も利用して頂いてる方から、たまには掛けてよと言はれたなら、そりゃ誰だらうとこちらも顧客だと思へばこそ、親切に色々説明して掛けてあげる譯です。

 話が逸れましたが、骨董品のお寶を手に入れたとしても、それに見合ふ代價が得られるとは限りません。犠牲の方が大きかったり、失ふものの方が多いことは多々あるものです。品物から人が見える、それが骨董なのかも知れません。



人が見たら蛙に化れ (朝日文庫)


Book

人が見たら蛙に化れ (朝日文庫)


著者:村田 喜代子

販売元:朝日新聞社

Amazon.co.jpで詳細を確認する


|

« 唐津焼 | トップページ | いい仕事 »

コメント

佐賀のレポート興味を持って拝読させていただきました。 ハイグレード佐賀の旅としてコース設定が出来ますね。連載ありがとうございました。 昨日恵比寿ウエスティンホテル漆器と明治伊万里のコラボの会で同行された方の知人と会ったので旅行のうわさ話がでていました。

ご紹介の本、友人がくれたので数年前に読みました。面白かったです。最近蓄音機は休止気味です。(汗)

投稿: smatu | 2007年8月 8日 (水) 20時13分

贅澤旅行は用意周到に準備を重ねた結果なので、さうさう何度も行けません。
伯林のシャルロッテンブルク城に磁器の部屋が在り、そこには景徳鎮や古伊万里が天井まで並んでゐます。初めてそれを見た時、日本も捨てたもんぢゃないと思ひましたが、自分の手で描き、触つてみるとまた違った見方ができました。
次回は是非、家族で武雄温泉に行ってみますね。

投稿: gramophon | 2007年8月 8日 (水) 20時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 唐津焼 | トップページ | いい仕事 »