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2007年9月12日 (水)

百年前の音樂

 先週末の「蓄音機の會」はワーグナー特輯の最後を飾る「舊吹込の歌手たち」でした。電氣録音が開始される1925(大正14)年より前のSP盤だけを掛けました。特に今回は室伏博行さんのご協力により「百年前のバイロイトは歌手たち」の副題が附けられ、第一次世界大戰前の吹込盤ばかりをお借りできただけでなく、ご本人の適切な説明により有意義な會となりました。

 私も幾つか古い盤は持つてゐますが、室伏さんのやうに二人のリヒャルト(ワーグナー&シュトラウス)だけに特化して集めてゐる譯ではないので、俯瞰して當時の歌手を眺めることができません。まだ、コージマが全権を握り、マーラーはやっと改宗して維納宮廷歌劇場で指揮をしてゐた時代です。コージマがしっかり本流のワーグナー歌手を育ててゐたのですから、師弟關係の相關圖を描き、一緒に見るとバイロイト系とミュンヘン系に分かれるだけでなく、誰がその系統だかはっきりしました。勿論、今では名前すら出て來ない忘れ去られた歌手もをりますが、直傳の歌ひ方は雑音の中からもしっかりと浮かび上がり、今とは違ふ歌唱法ではありますが、非常に説得力がありました。

Gruening 最初を飾つたヴィルヘルム・グリューニングの歌ふ《ローエングリン》より〈分かれ〉G&T 3-42454(3791h)は1906(明治39)年の初版盤です。まだ犬印の入る前の天使圖が使はれてゐます。以前、喇叭式蓄音機で同じ頃の盤を掛けた時は確かに聞こえる程度(「タモリ倶樂部」の空耳アワーのやうな感じ)でしたが、さすがHMV194型だけあつて、曲を樂しめるだけの音量と表情が伺へました。この當時の歌手は極端な話、まだ王様の持ち物であり飾りなので、伯林宮廷歌手とわざわざ明記してあります。

Reszke そして驚いたことに、すでに實況録音があり、しかも復刻盤があつたのです。今で云ふところの「機械オタク」のメープルソンと云ふ人がメトの演奏を縱振動の蝋管に入れたものを、1940年頃に横振動の圓盤(所謂SP盤)に復刻したものです。ジャン・ド・レツケが歌ふ1901年の《ローエングリン》より〈鍛冶の歌〉 IRCC110のほんの一部、2分程度で、そりゃあ、もう雑音は多いのですが、當時の通常演奏が記録されてゐる點が素晴らしい。その後の支配人はけしからんと言って止めさせた爲、マーラーの演奏は全く殘つてゐません。堅物が上に立つとこの世界はロクなことありませんね。

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