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2007年10月17日 (水)

靜かに遅く

 音樂速度表記の「Adagio」は日本語にすると「靜かに遅く」と譯されます。ブルックナーの交響曲ですと7番の第二樂章、8番の第三樂章、そして9番の第三樂章がそれに當たります。9番だけいきなり提琴のG線が強奏で響きますが、7番はワーグナー訃報に接し葬送の音樂となつてをり、深い嘆きと真摯な祈りが表現されてゐます。また、8番の場合もシンコペーションを使ひ徐々に山を登る如くに頂點へ向かつて行き、そして天恵のやうにハープが降りて來るのが印象的です。

Brnr8 8番の全曲SP盤はそもそも少ないのですが、手元にあるのは1949(昭和24)年録音の、オイゲン・ヨッフム指揮、ハムブルク・フィル Deutsche Grammophon Gesellschaft GVM 30004/08です。黄色のチューリップ柄の「ドイチェ・グラモフォン」ですね。ラベルを讀み取らうとして手を滑らせた爲、1枚目にヒビが入り、裏は丁度この第三樂章
なので惜しいことをしました。

 あらえびす著の『名曲決定盤(下)』中公文庫 の中で、ヨッフムに就いて「新興獨逸を代表する若さと情熱を持った人で、正直な指揮が特色であるらしい」と書かれてゐます。1939(昭和14)年初版ですから、新興獨逸と云ふのは勿論、國家社會主義獨逸勞働者黨(ナチス)のことを指すのでせうが、新進氣鋭の指揮者乍らまだSP盤が日本では手に入らず、演奏會の噂だけが届いてゐたのでせう。

Br8 生真面目なだけでなくて、正直者なのでせうか、確かに安心して聽ける演奏です。晩年のEMI盤と大きく變はるところがありません。何の不安もなく、アダージオに身を委ねてゐられるのは長い交響曲のSP盤にしては珍しいことかも知れません。妙なところで切られて盤を引ッ繰り返す譯でもなく、ごく自然と切れ目に當たるやうですし、大きな流れが途切れないのが素晴らしい。いい演奏です。

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コメント

gramophoneさん
ブルックナーの第8番(のアダージョ)のSP期の演奏でとりわけ私が気に入っているのは、クレンペラーがベルリンのシュターツカペレを指揮した録音(1924年)です。もちろん私はSP盤など持っているわけではなくCDに復刻されたものを聴いているのですが。
http://www.archiphon.de/121-124.htm
http://www.kapelle.jp/classic/klemperer/kroll_oper.html
アダージョのみとはいえ、20年代半ばにブルックナーを録音してこれだけ妥協のない腰の据わった演奏をするとは本当に驚異的です。ここには田舎臭さ(それは往々にして稚拙さ)は一切ありません。クレンペラーという人は徹底的にモダーンな指揮者であったことがよくわかります。この時代(20年代)におけるベルリンの音楽状況の一部を彷彿とさせます。この演奏、お聴きになられたことがありますか? もしまだということでしたら是非お勧めいたします。SP盤はおそらく入手至難かもしれませんが、ここはひとつCDで妥協していただいて(笑)。

投稿: la_vera_storia | 2007年10月17日 (水) 11時46分

へえ、電氣録音前に既にクレムペラーが第三樂章だけ吹き込んでゐたんですね。知りませんでした。するとハース版以前ですから、1892年のシャルク改訂版ですから尚更珍しい。CDはいつでも手に入るでせうが、何年掛かるか分かりませんが、SP盤も探してみますよ(笑)。

投稿: gramophon | 2007年10月17日 (水) 13時54分

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