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2007年10月23日 (火)

ヴェーヌスベルク

 一昨日、新國立劇場で歌劇《タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戰》を觀て來ました。官能のヴェーヌスベルクと清純な愛の葛藤を、中世のヴァルトブルクを舞臺にして描いた、ワーグナー初期作品。「3幕の浪漫的歌劇」の名に相應しく、〈序曲〉や〈大行進曲〉立派な管絃樂や〈嚴かな歌の殿堂〉〈宵星の歌〉〈羅馬語り〉等馴染みの曲も多いのですが、近頃《トリスタン》や《ワルキューレ》ばかりでしたので、稚拙な筆使ひや緊張感が持續せず、睡魔に襲はれました。

 ハンス=ペーター・レーマンの演出はなかなか凝つた造りでした。序曲の途中で幕が開くと煙の中、奈落から洞窟の氷柱が立ち上がり、見る者をヴェーヌスベルクへと誘ひます。しかし、バレヱは直接的に性交を描く譯ではなく暗示だけに留めてゐるだけなので、意圖が傳はらず退屈。後はこの柱が動くだけで、舞臺後方に映像が映され、光の色だけで情景を説明するので、舞臺に高低の變化もなく、つまらなくてがっかりしました。フィリップ・オーギャンの指揮は極めて中庸なもので、可もなく不可もなく。

 アルベルト・ボンネマのタンホイザーは聲は4階まで通るものの、聲質が禁斷の地では故郷を思ひ、ヴァルトブルクではヴェーヌスベルクが忘れられない異端兒の惱みが出ませんでした。マーティン・ガントナーのヴォルフラム、ハンス・チャマーの領主ヘルマン、リカルダ・メルベートのエリザベートは歌と共に演技もよく納得の出來。全體としては、及第點なのでせうが、浪漫を感じさせる熱い演奏ではなかつたので、刺戟に乏しく感動しませんでしたね。

 ヴァルトブルクの谷からすぐ傍にヴェーヌスベルクの洞窟が在ると云ふのも氣の毒な話。行くなと云はれれば、誰であらうと行きたくなるもの、それが愛慾の土地なら尚更でせう。男ならだれもが禁斷の地、ヴェーヌスベルクで愛慾の虜になつてみたい筈です。朝から晩までそれだけでは、きっと、タンホイザーと同じで飽きるのでせうが、一度位囚はれてもいい、と心密かに思ふ人が多いかも知れません。
 
 

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