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2007年11月16日 (金)

有吉佐和子

 文樂の小説となると、真っ先に擧げたいのは谷崎潤一郎著『蓼食ふ蟲』でせうか。離婚を前にした主人公、要は義父に誘はれ淡路嶋で人形浄瑠璃を見るのですが、義父が妾にお辨當を持たせ、酒を注がせ乍らなのが、時代を感じさせます。ドナルド・キーン曰く、谷崎は文樂が餘りお好きでなかつたやうですが、主人公が人形の魅力に開眼して行く様や、結婚、離婚、男と女の仲を考へさせる名作です。併し、文樂自體が中心ではあません。

 そこへ行くと、有吉佐和子著 『一の糸』 新潮文庫は造り酒屋の一人娘で、我が儘いっぱいに育った主人公茜が、目を患つてゐる時に、父に連れられて文樂を聽きに行き、そこで三味線の名手、露澤徳兵衛の「一の糸」の音に惚れてしまひます。太棹の一番低い音を出す、一の糸の音が他の人とは全く違つたからでした。そして、徳兵衛に惹かれ、紆余曲折の末にやっと結ばれ、三味線のの道を究める夫を支へ、連れ子を育て、大正から昭和、戰後まで、文樂の藝道の世界を生き抜く姿を描いてゐます。只のお嬢さんの成長も、まるで大河ドラマのやうな感じで丁寧に細やかに、女性らしく書いてゐます。實は今まで彼女の作品は一冊も讀んでゐませんでしたが、いやあ、これには脱帽です。こんなに古典藝能に造詣が深かつたとは。有吉佐和子は生前、『笑っていいとも』に出演した際、進行を妨げ、一人舞臺にしてしまつた、とんでもない作家の印象しかありませんでした。

一の糸 (新潮文庫)一の糸 (新潮文庫)


著者:有吉 佐和子

販売元:新潮社
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