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2007年11月12日 (月)

竹本住大夫

 文樂は太棹の三味線の伴奏に太夫が語る義太夫節の人形芝居ですが、太夫は時代、状況、科白、心情全てを語らなくてはなりませんから、肝心要の一番大事な演者です。然も、その「情」が巧く語れなくては、聽き手の氣持ちが入つて行きません。
 重要無形文化財(人間國寶)の竹本住大夫さんは1924(大正13)年生まれですから、御年83歳の現役です。決して美聲で聽かせるのではありませんが、太夫の語りはもう別格です。最初は勿論、全く名前も知らず、只聽いてゐただけですが、この太夫だけすっかり心を奪はれ、後で名前を見て合點が行きました。後の何回聽けるのだらうと思ふと毎回聽きたいのですが、如何せん仕事や家族の行事でなかなか行けません。

 忘れられないのは『假名手本忠臣藏』の「山科閑居の段」。大星由良助(大石内藏助)の妻お石は、本當は息子力彌(主税)と加古川本藏の娘小浪(コナミ)を添ひ遂げさせたいが、力彌は孰れ討ち入りして死んでしまふだらうから、それでは新妻となる小浪が可哀想だと最初は冷たくあしらひます。そして〈小浪の口説き〉と呼ばれる泣かせ所がやって來ます。小浪の母戸無瀬(トナセ)は主人に會はす顔がない、娘は他へ嫁ぐ意思がないので、母の手にかかって死ぬ覺悟を傳へると、戸無瀬が泣き出すのです。ウーウッウッウウー、ウッウッウッ、ウーウーウーとしつこく泣き出すだけでなく、最後はワワワー、ワワワワーと大泣きになります。それが、こちらも思はず目に涙となるのですねえ。情を語る太夫がもっと育って欲しいものです。

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