« 書畫箱 | トップページ | The Courier from Hell »

2008年2月18日 (月)

體感

 3月初めまで新國立新美術館館では、『没後50年 横山大觀―新たなる傳説へ』展が開かれてゐます。日本畫界の巨人の全貌が明らかにされる一大企畫展ですから、子連れで觀に行きました。かみさんはそそくさと「音聲ガイド」を借りに行きましたが、自分は使はず觀方だとか特徴を噛み砕いて説明し乍ら、ゆっくり最前列で鑑賞。

 富士山や海の繪で有名ですが、山水、中國の賢人など掛け軸や、屏風繪に描かれ、然も「今朝」に有るものと違つて巨大な上に状態のよい作品が多く並んでゐました。金地屏風に描かれた《群青富士》は六曲二雙で、右雙に群青色のモダンな富士が雲から抜きに出て聳え、左雙少し低い乍らも黒い山々が出てゐる壮大なものでした。
 壓巻は40米にも及ぶ巻物《生々流轉》は川の流れに四季が加はり、大海原へと導かれ嵐の中に龍が出現して去って行く壮大なものです。川の流れは小さな弧が澤山描かれて、海へ出ると今度は小さな三角が澤山描かれ、岩肌、苔、松、竹、遠くの山々等細密さと雲に隠れた見えない部分との割合が想像力を掻き立ててくれます。
描かないで雲を表現することで奥行きを與へる手法は西洋繪畫にはありません。
 《飛泉》は瀧からの水飛沫や白い泡、渦巻きが重なり音が聞こえるやうな迫力があります。《秋色》の鹿は果實を食べやうとしてゐるのか、鼻をヒクヒクしてゐる感じが妙に現實的で、疊の大廣間で薄ぼんやりとした明かりの中で觀たら、さぞかし生々しいものであらうと思ひます。

 中學の頃お世話になつた世田谷の庭球倶樂部の指導者に佐藤俵太郎がいらっしゃいました。日本人で初めてウィムブルドンの前英庭球大會やデ杯に出場した方です。その先生が日本郵船の船か何かで歐州へ渡るのに、毎日退屈で甲板を走り體力を養つた話と共に大觀も同船してたことを樂しさうに話したことがあります。船酔ひ激しく、殆ど一歩も船室から出ることなく、寝臺の横に一斗樽を置いて、清酒以外口にしてゐなかったのだとか。まあ、たまたま覗いた時に酒盛りしてゐただけかも知れませんが、酒豪の様子が伺ひ知れました。大觀は随分と年を取つてから酒を飲み出したらしく、肝臓は丈夫であつたとか。

 大觀を體感する絶好の機會です。是非、足をお運び下さい。結構混んでゐるので朝一番がお薦めです。

|

« 書畫箱 | トップページ | The Courier from Hell »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 書畫箱 | トップページ | The Courier from Hell »