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2008年2月22日 (金)

住大夫

 結局、3部全部觀てしまつたのですから、物好きだと云はれても仕方ありません。文樂東京公演第2部は、晴れやかな踊りの《二人禿(かむら)》、皇位繼承の陰謀を知つた繼子を繼母が折檻する《鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)》、そして西國三十三箇所の觀音様のお慈悲により盲目が治り、夫婦が喜ぶ《壺坂觀音靈驗記(つぼさかかんのんれいげんき)》の3本立てです。

 雪の庭先で、憎々しい繼母に割り竹で打たれる中將姫のなんと不憫なこと。吉田文雀の人形が情たっぷりに哀れを誘ひます。切りの豐竹嶋大夫の乘りもよく、憎々しげな繼母、純情可憐な姫を演じ分けて、ぐぐっと情を盛り立てます。
 どこまでも、心優しい姫は誰を恨むでもなく、秘密を守り通し、死んだ振りして侍女に助けられ、鶊山に逃れて行くのでした。その後、曼荼羅を織つて極樂淨土へ行けたと云ふ後日談は演じられませんでしたが、これでもかと虐める陰湿さは何時の世も變はりありません。公家の世界の陰謀だとか、一寸韓國ドラマ「チャングムの血誓ひ」のやうでもありました。

 壺坂觀音靈驗記の〈澤市内の段〉の切りを我等が竹本住大夫が語ります。鶴澤錦糸の音からして、やや遅めの出だしでたっぷり聞かせます。「夢が~浮き世か~、浮き世が~夢か~」と始まると、す~と澤市の侘び住まひの世界に入つてしまふから不思議です。聲が大きい譯でもないのに、迫力が違ひ、結婚してから毎夜中にこっそり抜け出すのを問ひ詰めると、實は夫の眼が治るやうにと壺坂觀音様へお參りに行ってゐたと云ふお里の答へに恥じ入る澤市。縫ひ物をする女房お里がまた器用で、吉田蓑助の技の映える見せ場でもありました。澤市の桐竹勘十郎も夜の部で狐忠信を演じる筈なのに、實に堂のいった人形捌きに感心します。〈山の段〉では、これだけ女房が祈っても眼が治らないならと、崖から身投げする際は人形だけ、ぽつねんと落とすのが印象的。それを知ったお里も後を追ふものの、觀音様がお出ましになり、二人の寿命を長らへ、澤市の眼を治してくれたので、二人して深謝して「萬歳」を唱へて喜び舞ふのでした。

 《冥途の飛脚》の〈封印切りの段〉で竹本綱大夫がもう少し聽かせてくれたら、3部それぞれもっと樂しめたことでせう。住大夫の出番は僅か30分程度でしたが、久し振りに聞けただけでも嬉しく、文雀、蓑助の艶やかな主遣ひも觀られて樂しうございました。

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