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2008年4月15日 (火)

狼谷

Bauer 友人の代はりに新國へ。エッティンガー指揮、東フィルの歌劇《魔彈の射手》と云ふのに惹かれただけでなく、平戸間最前列と云ふとんでもない最高の席です。ほぼ真ん中なので、指揮者の頭が見え隠れし、的確な指示が手に取るやうに分かり、然も唸り聲や旋律を歌ふ聲まで聞こえて來ます。減り張りがあり、引き締まつた演奏は、期待に應へてくれただけでなく、大きな感動を呼びました。

 獨逸浪漫派の代表作として、獨逸では頻繁に取り上げられますが、日本ではさほど取り上げられません。森を畏怖する獨逸人の感覺が傳はらない譯ではない筈ですが、耳に心地よい有名なアリアの連續ではないのが氣に入られてゐないのでせう。

 森林官クーノーの娘と相思相愛の獵師マックスはこのところ不振に陥り射撃が當たりません。明日の射撃大會に勝たねばアガーテと結婚できず自暴自棄になつてゐるところ、獵師仲間のカスパールに唆され、狼谷へ行き、森の惡魔ザミエルが支配すると云ふ必ず當たる魔彈を手に入れます。鋳造された7つの彈の内、最後の1つはザミエルの意のままになると云ふもの。この第二幕の狼谷は超常現象を具現化する爲、演出の腕の見せ所です。子供騙しの亡靈や烏に蝙蝠、鬼火に嵐で終はらせるか、それとも意表を突く大人も納得させる舞臺にするかで随分と歌劇全體に對する印象も變はることでせう。實相寺さんなら、きっとウルトラマンの怪獸を出したことでせうが…。
 シュテークマンの演出は、終始暗い陰のある舞臺で、然も「森は生きてゐる」感じを全面に出してゐました。蛇腹のやうに接續された森の壁が波打つやうに自在に動き、家が奧に引き込まれたり、工夫の數々が生かされ、幻想的な感じが素晴らしいかつたです。また、序曲の前に幕内で隠者が不吉な夢の話をしたり、第三幕序奏で6つの彈を打つ場面を挿入したり、分かり易さに氣を遣つたつくりです。但し、これは蛇足として捉へる人も居るでせうから、嫌がる人も居るでせうが、私は好感を得ましたよ。

 主役マックス役アルフォンス・エーベルツの聲は抜きに出てでかく雄辯でしたし、アガーテ役エディト・ハッラーも品のあるお孃さんを熱演、そしてそれを支へるエンヒェン役のユリア・バウアーは聲は小さいものの脇役としての可愛らしい乙女が素敵で、カスパール役のビャーニ・トール・クリスティンソンは低音が會話でも響く魅惑の聲で魅了し、隠者役の妻屋秀和は會話はやや片假名ぽいものの、説得力のあるバスの歌が素晴らしかつたです。
 いい演奏の後は出待ちです。海外引越し公演では100人位がずらりと待ちますが、新國の日常公演故、20名程度の顔見知りが多く、指揮者も歌手も丁寧に對應して一緒に寫眞に収まったり、お話ししたり、サインしたり、非常に和やかな雰圍氣はこれまたグーでしたね。畫像は娘さん連れであつても輝きを失はないバウアーさんの魅惑的な笑顔です。

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