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2008年5月 9日 (金)

没後10年黒澤明特集

 戰後を代表する映畫監督と云へば、小津安二郎、溝口健二それに黒澤明に異論を唱へる人も居ないことでせう。《東京物語》、《雨月物語》、《七人の侍》は誰もが知つてる(筈)の名作です。丁度、黒澤明(1910-1998)没後十周年特輯として、日本放送協會衛星放送では全30作品を順繰り放映してゐます。

 黒澤監督の晩年の総天然色の繪はどうも好きになれませんが、白黒の娯樂に徹した脚本の妙やカメラ技法に凝った昔の作品は好きです。土砂降りの雨の中で戰ふ《七人の侍》、溝口の《雨月物語》とはまた違つた妖艶さを出した京マチ子の《羅生門》、今も變はらぬお役所仕事と志村喬のブランコの場面が忘れ難い《生きる》、身代金目的の子供誘拐を描いた《天國と地獄》等、はっきりと記憶に殘る映像ばかりですが、まだまだ見てゐないものも多いのも事實。自稱映畫好きとしては、もっと見るべき作品が數々あります。

 たまたま、処女作品《姿三四郎》を觀ました。この作品は1943(昭和18)年に初公開されたときは全長97分であつたものの、戰時下故、翌年鋏が入れられて80分の作品になつてしまつたと、戰後上映の際に加へられた説明文が入つてゐます。長い間失はれたと思はれフヰルムが、ソ連崩壊後、露西亞で發見され、それには一部カットされた部分が含まれてゐたと云ふものの、放送は一般的な短縮版でした。
 
 柔術家を志す姿三四郎(藤田進)が矢野正五郎(大河内傳次郎)に弟子入りし、他流試合で村井半助(志村喬)をなぎ倒し、檜垣源之助(月形龍之介)と荒野で果たし合ひをするまでを描いてゐます。こんな昔から志村喬は出演してたことに驚き、洋装の悪役、月形龍之介の無言の押し出し、轟夕起子(小夜)の日本髪(本物の地毛?)等、何故か目に附きました。
 人力車、和傘、下駄の鼻緒を仕草等、今は失はれた明治の生活が生き生きと描かれ、この人は「風」と「雨」の映畫監督だと思はせるものがあります。処女作から天候待ち等完璧な繪を望んだのかは知りませんが、荒い白黒畫面から傳はる情熱は現代の我々をも飽きさせません。さすがです。

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