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2008年6月10日 (火)

道を踏み外した女

 ヴェルディの歌劇《ラ・トラヴィアータ》を新國で觀る。日本ではアレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿をもつ女』から、《椿姫》と呼ばれることが多いものの、ヴェルディとしては現代劇なので、當時の道德觀に從つて《道を誤った女》乃至《道を踏み外した女》と改題したやうです。

 粗筋は有名なのですが、念の爲…
 巴里のサロンで、高級娼婦ヴィオレッタに自分の戀を打ち明けたアルフレート。金の絡まない純真な愛に心を打たれ、同棲を決意します。(第一幕)
 巴里を離れて3箇月も仲睦まじく暮らしてゐますが、實はヴィオレッタが自分の私財を削つて生活してゐたのでした。そこへアルフレートの父ジェルモンが、娘の結婚の爲に別れてくれと迫ります。既に結核に冒されてゐるヴィオレッタは死を覺悟してゐて、アルフレートの爲に泣く泣く別れを決意し、巴里へと戻ります。併し、事情を知らないアルフレートはそれに怒り、我を忘れて追ひ掛け、サロンで賭博で勝つた金をヴィオレッタに投げ附けて侮辱します。今はドゥフォール男爵に囲はれてゐるヴィオレッタの爲に、男爵はアルフレートに決闘を申し込むのでした。(ダニ幕)
 既に病状も惡化したヴィオレッタは床に伏し、アルフレートとの再會だけに希望を繋いでゐます。ジェルモンの手紙から、男爵は傷附くも快方に向かひ、外國に逃れたアルフレートも直に戻ることを知らされ、まだか、まだかと待ち續けてゐます。やっと戻ったアルフレートと愛を確認し合ひ、恢復を誓ひますが、時既に遅く事切れてしまふのでした。(第三幕)

 今回は再演でしたが、ルーカ・ロンコーニの演出が19世紀半ばの巴里の建物内部を忠實に再現してゐて、それが下手から上手へ壁やソファが動き、澁い大人の味はひがありました。派手に哀れを誘ふ女性として描くこともできるのに、しっとり耐える女として捉へ、落ち着いた色調が暗い歐州の冬と室内の瓦斯燈と相まつて、よい雰圍氣を釀し出してゐました。
 上岡敏之の指揮は、かなり獨特なテムポで、メゾ・ピアノ位で然も中途半端なテムポで始まり、幕が上がると突然アッチェルしてがらりとアップ・テムポにしたのは面白ひものの、聞かせ処は伸ばし過ぎて、ややもたつく感じもして、こなれてゐない印象が強かったです。

 歌手陣は細かいことを言へば、エレーナ・モシュク(ヴィオレッタ)は所々聲が出てゐないものの、演技はよく、ロベルト・サッカ(アルフレート)は若くもないのに無理してる感じがややもして、ラード・アタネッリ(ジェルモン)は低音を響かせ貫禄がありました。全體的には十分合格の樂しめる作品に仕上がつてゐました。

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