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2008年7月 2日 (水)

それから

 貴殿の文章を讀んでゐると「代助」を思ひ出すと云はれ、久し振りに夏目漱石著 『それから』 新潮文庫を讀みました。文藝に秀で、高等遊民たる感覺が似てるとその人は言ひます。

 代助は親の金で定職も持たず、實社會に根差さない思想家であり、嘗て愛した三千代を友人に譲り、寧ろ斡旋した位であった。再開した夫妻に援助を頼まれても、親か兄に頼る他はないけれど、再び三千代との逢瀬を重ね不義密通を夫平岡に告白し、それが故に家から勘當され、いよいよ仕事を探さねばならなかった。

まあ、そんな内容なのはご存知の通りですが、漱石の頭の中でぐるぐるした言葉の斷片や考へをいちいち記録したやうな明治知識人の苦惱なんですねえ。最初のうちはのらりくらりと思想ばかりで、正直、屁理屈ばかり。近代的自我とは申せ、内面を見詰めるだけで、働きもしない、今で云ふ「フリーター」、所謂「プー太郎」が、必ず破局を迎へる結末を理解し乍らもそれにあがらうことなく、一直線に愛を進み、彼女は心の病に仆れ、友人には絶交され、家族からは愛想が尽かされる譯です。
 當時なら資産家なのですから、氣に入らずとも誰かを嫁に貰ひ、妾として囲ふことは許されてゐた筈です。踏ん切りの附かない、煮え切らない態度、どちらとも結論を出さないで、只何となく生きて來た代助。現在の非職業成人も似たやうなものなのでせうか。

 自分の文章にそんな胡散臭さがあるとしたら心外ですが、まあ、所詮はお坊ちゃんの戯れ言ですね。

それから (新潮文庫)Bookそれから (新潮文庫)


著者:夏目 漱石

販売元:新潮社
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