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2008年8月 5日 (火)

巴里オペラ座

Pari 初來日となる巴里オペラ座公演《トリスタンとイゾルデ》をオーチャードホールで觀る。2階袖席故、舞臺に近く、沸き上がるオケの音が響くだけでなく、合唱や合圖の喇叭等もこの觀客席を利用した爲、非常に音が立體的となり効果が上がり、全て渾然一體となるのはワーグナーの意圖した響きでせう。
 今回の演出で特記すべきことは映像作家ビル・ヴィオラによる映像が舞臺に4時間垂れ流され、主人公の心象風景として海、月、水、火、木、水中で絡み合ふ男女、逆回しにより水と共に昇天する場面等が寫し出されました。美しい映像が歌劇理解の助けになつたのは確かでせうが、非常に單調故氣附くと寝入つてゐたなんてことが屡々ありました。曖昧模糊、意識白濁、はっきりとしない、もやもやとした感じはワーグナーそのものかも知れませんが、曲に集中するよりは、どっぷりと身を任せる感じです。

 久し振りに聽くセミヨン・ビシュコフの指揮はしっかりとした、重いテムポで縱横無尽に繰り廣げられ、減り張りもあり、低音の効いたワーグナーらしい響きがずっと鳴り續けてゐたのがよかったです。映像がある爲、ピーター・セラーズの演出は過度な動きもなく、真っ黒い舞臺で歌手が照光により浮き上がる他抑へた演技です。
 ヴィオレッタ・ウルマーナ(イゾルデ)は鮪のやうな巨漢を生かし非常に聲も出て、大きなオケの音の洪水に埋没せず、フランツ・ヨーゼフ・ゼーリクのマルケ王も堂々として一幕最後は一階平戸間に姿を現した時の存在感がありました。クリフトン・フォービス(トリスタン)も上手でしたがプログラムの寫眞と違つて禿オヤジであつたのが殘念。ボアズ・ダニエル(クルヴェナール)は表情もよく、エカテリーナ・グバノヴァ(ブランゲーネ)も清楚な雰囲氣がよく、歌手の凸凹がなく、非常に緻密なアムサンブルが素晴らしかったです。陶酔の局地の《トリスタン》として記憶されることでせう。
 終演後は机が出され、出演者並びにジェラール・モルティエ総裁も終始笑顔で一人一人にお禮を言つてサインしてくれました。モネ劇場、巴里と改革路線が成功したのですから、紐育へ行かず新國に來てくれれば、どれだけよかったことか…

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