« 移籍 | トップページ | 十三夜 »

2008年9月22日 (月)

Throne of Blood

Kumonosu 邦譯すると《血染めの王位》ですが、これは黒澤明1957年作品、映畫《蜘蛛巣城》の英題です。ご存知の通りシェークスピアの『マクベス』を原作として、戰國時代の日本に舞臺を移して撮つたものです。

 配下の謀叛から、絶體絶命の危機に陥つた蜘蛛巣城、城主都築國春(佐々木孝丸)。籠城を決意し最後の一兵迄で戰ふ決意をしたところに折良く、鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋實)の活躍により危機は回避されたことを知る。大勝利を直接知らせる爲、蜘蛛巣城へ向かふ二人は森の濃霧の中で道に迷ひ、物の怪の老婆(浪花千栄子)に出遭ふ。武時はやがて蜘蛛巣城の城主となるだらうと豫言を授けられ、それを知った妻の淺茅(山田五十鈴)に唆され、或る晩、自城に滯在した國春を殺し、蜘蛛巣城城主となるのだが…

 餘り詳しく書くと未だ觀てゐない人にネタバレになるので止めてをきますが、シェークスピアと云ふより黒澤の世界觀がしっかりと出た、戰爭映畫です。先日、衛星放送で初めて見ましたが、噂通り、最後に武時が次々と矢を射かけられる場面では、特撮にない大迫力。大寫しの三船の恐怖におののく顔が印象的です。三十三間堂で通し矢をしたと云はれる人間國寶級の名手が射つた矢がバシバシ飛んで來ます。一寸間違へれば殺人になりかねない近距離に射來まれる爲、後で酒に酔つた勢ひで黒澤の自宅に押し掛けたと云はれる位生死を賭けた撮影であつたのですね。

 それに冒頭、霧の中に「蜘蛛巣城跡」の立て札から、霧に埋もれ晴れると城になると云ふ時空の超え方も素敵です。陸自の北富士演習場で撮つたのか、サラサラ火山土壌だとかに佇む兵士の間に霧が流れ、その切れ間を待つて撮影されたのでせう、絶妙なところに拘りを感じます。山の麓に城が在るのは山上から攻められさうで、やや不自然な感じもしますが、戰の無常觀がよく出てゐました。
 そして、時代考証に從ひ眉毛を剃り、おでこに朧眉を描いた奥方の化粧が怖い。手を洗ふ場面はシェークスピアと同じですが、陰影の強い白黒映畫の良さが出て、おどろおどろしい雰圍氣がよく醸し出されてゐました。矢張り、黒澤作品は白黒時代の方が好きです。

|

« 移籍 | トップページ | 十三夜 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/41030/23804298

この記事へのトラックバック一覧です: Throne of Blood:

« 移籍 | トップページ | 十三夜 »