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2008年11月21日 (金)

仙臺伊達藩騷動

 今月も演舞場で海老藏を觀る。演目は仙臺伊達藩のお家騷動を浄瑠璃にした《伽羅先代萩(メイボクセンダイハギ)》。「伽羅」とは香木「キャラ」のことで、實際に遊興が派手すぎて隠居させられた仙臺藩主が香木で作らせた下駄を履いて吉原通ひをしたこと、それに「先代」は「仙臺」に掛け、東北の花とも云へる「萩」で、現實に起こつた騷動を暗喩してゐます。

 「花水橋」「竹の間」「御殿・床下」「對決・刃傷」と一應通しで見られました。現代ものを上演できない江戸時代の作品ですから、舞臺は室町時代。足利家の當主頼兼は、連日の廓通ひが過ぎて隠居させられてしまひます(序幕・鎌倉花水橋)。
お家乘ッ取りを企む惡の権化、仁木彈正(海老藏)が蔭で糸を引き、新しいご當主となつた嫡男、鶴千代を亡き者にしようとしてゐます。

 「足利家竹の間」
 それを知る乳母の政岡(菊之助)は、鶴千代を守る爲に毒殺の危險から三度の食事に手を附けさせず、一日一度自らご飯を炊いて食べさせ、奧殿には男子立ち入り禁止にして、できるだけ危險から遠ざけてゐます。その分、小姓の我が子千松には、いざと云ふ時は毒でも何でも食べて、若君をお守りするやう、ようく言ひ含めてあります。

 表向き病氣となつてゐるので、彈正の妹の惡女、八汐(愛之助)等が見舞ひに來ます。適切な治療をしようと八汐は小槇を連れて來て脈を診せると「必死の脈」。これは曲者が潜んでゐると、豫め頼んでをいた忍びの者を見附け、正岡に頼まれたと云はせ、政岡名の入つた願書を出したり、兎に角、権威を傘に八汐は難癖を附けて、政岡を遠避ける作戰。併し、八汐を嫌ふ若君は政岡が牢獄に這入るなら自分も一緒に行くと言ひ出し、命令を出した鬼貫は自分の配下なのだから、自分に逆らふ者は皆手討ちにすると言はれて、仕方なく引き下がる八汐。


 「足利家御殿」
 空腹に耐える鶴千代君と千松にご飯をあげよう、と茶道具を使つてご飯を炊く政岡の下へ、今度は管領山名宗全の妻、榮御前が來ます、この山名こそ、惡の一味黒幕故、この人も惡人です。病氣見舞ひと稱して毒入り菓子を持つて來ます。つひ手を出さうとする若君を止めた政岡が叱責されます。すると奧から飛び出して來た千松が菓子を頬張り、あッと云ふ間に苦しみ出し、企みが露見しないやう八汐が無禮を理由に殺してしまひます。目の前で我が子を殺されても顔色一つ變へない政岡を見て、これは鶴千代と千松を入れ替えてゐたのだと勝手に思ひ込んだ榮御前は政岡も一味だと早合點して、惡黨一味の連判状を見せるだけでなく、預けて歸へります。
 ひとり殘った政岡が我が子の遺體を抱き上げ、悲嘆に暮れるのを背後から斬り附ける八汐は、簡單に返り討ちに合ひ、千松の仇討ちをする政岡。併し、その時、一匹の鼠が惡事の証拠、連判状をくわへて逃げ去つてしまふのでした。

 「足利家床下」
 讒言の爲遠避けられゐる荒獅子男之助(獅童)は、奥殿の床下に潜んで若君をお守りしてゐるところに、怪しい鼠が姿を現した爲、鐵扇で打ち据えるものの取り逃がしてしまひます。ところが、この鼠こそ、妖術で姿を變へた彈正でした。花道から煙と共にせり上がり、人間の姿に戻つた弾正の眉間には、男之助に附けられた傷が生々しい。雲の上を這ふやうに、不敵な笑みを浮かべて姿を眩まします。

 「問注對決」
 この場は裁判劇です。若君、鶴千代を擁護する渡辺外記左衛門が訴へ出た爲、彈正一味は裁判を受けることになります。併し、裁判官が黒幕の山名宗全故、外記が幾ら訴へても、評定は惡人方が勝利してしまひます。そこへ、細川勝元(松緑)が出座して逆轉勝利、外記たち忠臣の勝利となります。彈正の知らぬ振り、追ひ詰められる樣が見所です。

 「控所刃傷」
 惡事が露見した彈正は腹の虫が治まらず、逆恨みから外記に斬り掛かります。外記は深手を負ひ、泡や止めを刺される寸前に助太刀を得て、見事に彈正を討ち果たします。前幕迄平靜であつた彈正が、此処では狂つたやうに暴れ回るのが魅力です。そして、勝元は、外記の忠義を賛へ、鶴千代に家督相續のお墨附きを與へ、自分の駕籠を差し出し、祝ひの舞を求める。外記は最後の力を振り絞つて、謡を口遊(ずさ)んで舞ひ、かうして足利家の騷動も一件落着するのでした。

 粗筋を紹介するだけでも、結構な量ですねえ。元々これは義太夫なので泣き所が判るだけに、菊之助の情の深さに目頭が熱くなりました。それにも増して大きな演技の海老藏には舌を巻きました。彼が出て來るだけで、舞臺の雰圍氣ががらりと變はります。とてつもなく迫力、氣合ひが唸り聲と共に響き渡り、ぞくッとさせられます。大成しますねえ、きっと。

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