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2008年12月12日 (金)

若手の活躍

 今月の文樂東京公演は《源平布引瀧》。平清盛全盛の頃、源氏の白い御旗を守り、將來兵を擧げる木曾義仲誕生秘話を絡めたお伽噺です。齋藤實盛が髪を黒く染めて錦の直垂で戰ひ、義仲の家臣、手塚太郎光盛に討ち取られる後日談の原因を解き明かしてゐます。今回は前から4列目中央ですから、見晴らしよく、最高の席でした。

 〈義賢館の段〉: 登場人物の説明を兼ね、表向きは燒き捨てた筈の源氏の御旗を守り抜き、平家に反旗を翻す場面。
 のっけから三輪大夫の聲が通ります。歌舞伎のくぐもって居乍ら、聲を張り上げるのではなく、腹の底からスルリと聲が出てる感じで氣持ちいい。續く奧の呂勢大夫も情を美味く語り清々しい。また、義賢の主遣ひ、勘十郎の風格。武士の大將らしい格と品位がステキでした。

 〈矢橋の段〉: 源氏の御旗を託された小まんが立ち回りの末、琵琶湖に飛び込む場面。
 芳穂大夫の相方、まだ十代の寛太郎、一人彈は初めてでしたが、何の迷いもなく滯りなく濟んで、成長を感じました。

 〈竹生嶋遊覧の段〉: 平家の御座船に助けられた小まんが御旗を奪はれさうになり、齋藤實盛が腕を切り落として旗諸共に湖底へ沈んで行きます。
 波の音を表す太鼓の音で琵琶湖だとすぐに判るやうになりました。小まんの主遣ひ、和生が泳ぐ姿が鮮やかで、こちらまで水を飲んで溺れ掛かつた氣分になりました。また、大勢の大夫の内、飛騨左衛門役の呂茂大夫の聲が抜きん出てでかく、度肝を抜かされたものの、粗忽者らしさが出てこれは、これでよかったです。

 〈九郎助内の段〉: 源氏の末裔を捜索してゐる平家方が落ち延びた義賢の妻、葵御前を探し出し、腹の子諸共に抹殺しようとしますが、源氏に心を寄せる實盛の機轉で二人は守られます。そして、葵御前は無事に出産、後の木曾義仲が誕生します。實は腕を切られた小まんは十郎の娘であり、わざと自分の孫、太郎吉に手柄を立てさせやうと十郎自ら刺され、首を差し出します。義仲の最初の配下となつた太郎吉は母の敵と實盛に挑みますが、30年後に合戰で逢はうと實盛は颯爽と馬に乘つて去るのでした。

 この終幕前半、親子の情を語る中堅睦大夫と文字久大夫にはがっかり。情が演じ切れず、眠くなることしきりで、全然舞臺に集中できません。住大夫の弟子、文字久大夫は語り口が似てるところがたまに出て來ますが、全然悲しくならないから不思議。折角の錦糸の太棹が死んでました。
 その後を繼いだ千歳大夫は汗水垂らして力は入つてゐるものの、ブツブツと切れるので、語りにならず、詰まらない。さうして、後を語る咲甫大夫の方が展開の早い場面をテキパキ、通る聲で演じるのそれまでの鬱憤もすっきりでした。お相手はこの間お會ひした燕三は安心して聽けます。 そして、實盛の主遣ひ、玉女も堂々として立派でした。ひらりと馬に跨る仕草がこれまたいい。

 文樂はいいなあ、歌舞伎と違つて人形の立ち回りや動きが速くて、緩急の差があります。

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