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2009年3月19日 (木)

エデン

 獨逸映畫《厨房で逢ひませう》をケーブルテレビで録畫してをいたものを觀る。ミヒャエル・ホーフマン監督作品は、料理もさること乍ら、他に何の趣味も持たない腹の出た巨漢のシェフの戀を心情たつぷり描いてくれた。

 料理が全てで、人附き合ひの下手なシェフ、グレゴアが、休みの日にいつも行く公園で、給仕嬢を遠くから見てゐる。彼女、エデン(原題)はダウン症の子供を抱へ、老人にダンスを教へる夫と共に落ち着いた生活をしてゐたが、グレゴアが溺れさうになった娘を助けたことから、親しくなる。そして、娘の誕生プレゼントに持って來たプラリネを一口食べてから、彼の料理の虜になつてしまふ。

 毎週火曜日、夫が惡友たちと飲みに出掛ける間、グレゴアの店へ通ふエデン。客ではなく、厨房にまっしぐらへ向かひ、3箇月も先まで豫約が埋まつてゐる店の料理をひとり堪能する。官能的な料理にうっとりし、家に戻ると夫にもう一人子供が授かるやうに迫るエデン。併し、夫クサヴァーは二人の間を勘ぐり、嫉妬に驅られ、こっそり忍び込んで地下藏のワインを破壊し、この町から去れと迫る…。

 
 グレゴア役のヨーゼフ・オステンドルフがとてもいい。ナチスの空軍大臣ゲーリングのやうな腹だが、子供の頃から妊婦であつた母のお腹に憧れてゐたと云ふ設定も素敵。直向(ひたむ)きな料理人であり、自分の氣持ちは全て料理に託してしまふシェフォを好演してゐた。そして、毎週通って來るエデンを靜かに見詰めるだけ。友達だからと一線を越えない大人の密かな戀。
 エデン役のシャルロット・ロッシュはごく普通の若い主婦と云ふ感じが出てゐてよかった。これが、絶世の美人ならクサヴァーがもっと監視もしただらうけど、田舎のしがらみの中だけで十分に生きていける筈である。

 シュヴァルツバルト邊りへ行くと、澤山小さなレストランが在る。然も、どこも旨いと來てゐる。昨夏、MotoGPで訪れたザクセンリンク近くの田舎町のホテルも清潔で、料理も美味しかったことを思ひ出す。料理の盛り附けも非常に丁寧に描いてをり、そんな器用な獨逸人シェフは珍しいから流行るのも納得できる。

夕暮れの獨逸の田舎町、牧草地を抜けるメルツェデス、日の落ちた中の針葉樹の匂ひ、佛蘭西や伊太利にはない日の光は獨逸らしい。悲劇で終はらず、救ひのある結末もよかった。お勸めです。

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