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2009年10月30日 (金)

邦樂公演

 國立劇場小劇場の邦樂公演、「文樂素淨瑠璃の會」を聽く。人形がない分、大夫の語りだけで人物を語り分けなければならないが、住大夫の真骨頂が發揮され、多くの登場人物が目に浮かぶやうに真實味がある。《戀女房染分手綱》より〈沓掛村の段〉。再開むなしく子供と分かれる場面〈重井の分かれ〉が有名なのだが、今回は割と地味な場面。しんみりさせる内容だが、最初の一聲からもう引き込まれてしまつた。入れ替はり立ち替はりに人が出て來ても、きちんと人形の顔すらも浮かぶ。字幕すらも邪魔になる位、聽く方も集中した。砥石で刀を研ぐ場面ではこちらも固唾を呑んで耳をそばだてると、三味線だけの音が怪しく響く。この錦糸の技も冴え、忘れられない舞台となった。
 

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2009年10月29日 (木)

すき燒に合ふワイン

Tanakawine ワイン雑誌『ワイナート』の主筆であり、日本橋濱町ワインサロンを主催する田中克幸さんのワイン會がすき燒今朝で開かれた。は齒に衣着せぬ辛口論評で定評のある田中さんがどんなワインを合はせるのか興味津々であつた。以前から酒精強化ワインのシェリーやオロロソが合ふとおっしゃってゐたのだが、アルコール度數の高いこれらのワインは食中酒に向かない。最初から最後まで飲むには疲れてしまふだらう。

 まづ、すき燒に就いて、語源、日本人の肉食、牛鍋とすき燒の違ひ、日本の肉食の歴史、今朝の由來、すき燒の食材等ざっくり解説した後、すき燒とワインの絶妙な組み合はせを探る講義に入つた。すき燒のどこに注目してワインを合はせれば良いのか。和牛の脂、蛋白質、醤油、甘味と主たる成分を鑑み、味はひの廣がりに合はせなくてはならず、重心が揃はなければ反發してしまふとのこと。すき燒の丸く重い味はひには

 1. 2006 「シャトー・レキュイエール」    ポムロールの柔らかいメルロー
 2. 1995 「オルネライア」    熟成した伊太利のカベルネ・ソーヴィニヨン
 3. 1990 マルセル・ジュージュ 「コルナス」キュヴェC    熟成したシラー 
 4. 1998 ピエール・ダモワ 「シャムベルタン」   熟成したピノ・ノワール
 5. 2003 アルベール・ボクスラー 「アルザス・グランクリュ・ゾマーベルク ピノ・グリ」
 6. 1989 ジャン・ノエル・ガニャール 「バタール・モンラッシェ」 長期熟成シャルドネ
 7. 1995 アルヴァロ・パラシオス 「レミタス」 西班牙産グルナッシュ
 8. エル・マエストーソ・シエラ 「オロロソ」 西班牙の酒精強化ワイン

がよいと考へられ、ワイン用小型冷藏庫もお持ちになり、嚴かに試飲が始まる。ワインの説明が終はる頃に愈、すき燒〈竹〉だが、リブロース肉に腿肉のカメ、イチボ、シンシン、内モモと部位を比べ乍ら、玉子も附けずそのままであつたり、潜らせてみたり、一口食べては飲み比べ、幾通りも試してみた。

 1番は意外とタンニンが際立ち柔らかく感じず、逆に力強いのは一見柔に見える4番であり、ロース肉と玉子に負けない力を備へてゐた。
 ロース肉は脂身の甘みが強く、モモ肉は赤身が多い分牛肉らしく感じる中、意外と2番が貢献してどれにも合ひ、3番は椎茸に合ひ、燒豆腐と4番は合はず、5番は葡萄のべったりとした甘味が邪魔をし、6番は古酒のシャルドネにも拘はらず酸味が浮いて全く合はず、單體で飲んだ方がよかつた。7番は千住葱に合ひ、肉の味を引き立ててくれ、8番も確かに無難に合ふがアルコールが強くて疲れてしまふ。春菊の青臭さは強烈でどのワインよりも風味が勝ってしまつた。

 結論としては、最良のコンビはなく、それぞれ一長一短、熟成したブルゴーニュの赤が一番外れない。併し、誰もが註文できるやうな代物ではないのが痛いところ。ご飯、赤出汁、香の物をお出しして、最後に自分の秘藏してゐた2004年産新西蘭、アタランギの「ボトリティス・リースリング」を振る舞ひ終了した。大きく外れなくても、肉の部位よつて合つたり、合はなかつたり、野菜とはとんでもない組み合はせで口の中で驚いたり、とてもよい經驗となつた。    

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2009年10月28日 (水)

牛タン

Nec_0311 仙臺と云へば、牛タンに笹蒲鉾、それにずんだ餅だらうか。併し、セミナーで散々添加物の恐ろしさを聞いた爲、裏返して見ると長蛇の添加物が羅列してある食品を見ても全然食指が動かない。多くの繁盛店の牛タンは米國産であり、蒲鉾も保存料として何だか色々入つてゐる。かう云ふものを何年も食べてゐたら、土葬されても腐らないかも知れない。

 そこで、すきや連で知り合った「かとう」を訪ねた。精肉店を營むでゐる爲、恐ろしく安い金額で晝食を提供してゐる。折角なので、仙臺牛の牛タン定食を頂く。米國産のものはどうしても臭みが抜けないが、黒毛和牛の牛タンは別格である。肉に風味もあり、嚙むとじんわり肉汁が浸み出て旨味を感じるのだ。刺激物に弱い自分にはやや胡椒が強かったが、一般には刺激が強調されて喜ばれる筈。今度立ち寄る機會があれば、是非、すき燒を頂きたい。ご馳走樣でした。

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2009年10月27日 (火)

宮城縣美術館

Nec_0310 大宴會の後はまだ二次會まで設定され、散々ワインを頂いたのでどっと疲れの出た翌朝。、伊達正宗所縁の品々を見ようと仙臺美術館へ行く筈が、改装休館中で、仕方なく宮城縣美術館へ。

 特別展は東京で見損ねた「トリノ・エジプト展」。
伊太利で觀たのでもうよいと思つてゐたものの、日本語表記の解説で選りすぐりの作品がコンパクトに並び、本家をぐるぐる歩いて疲れたのと違ひ見易かった。

 小企劃展「素描と構想」には速水御舟の素描や下繪が並び、その作品は縮小版複寫で比較でき、吉原治良の習作など作品に至る作家の葛藤が浮かび上がる面白い展示であった。

 常設展「日本と海外の近現代コレクションより」は地元松嶋を描いた油彩や大觀「後赤壁」、觀山「菊児童」に東郷青児、梅原龍三郎からカンディンスキー等著名人の作品が並ぶ。結構いいものがあった。

 館内の佐藤忠良記念館の常設展では一室が「特集=ブロンズと原型」という企劃展示だった。石膏原型とブロンズ像が並べられ、隣では粘土原型製作から石膏の型取り、ブロンズ像鋳造までの樣子がビデオ上映されていた。この工程理解が作品を觀る目を變へ、その質感の違ひが皮膚感覺で解るとてもよい展示であった。因みにこの佐藤はトルストイ原作の繪本「大きな蕪」の挿繪を描いていたと初めて知る。

おおきなかぶ―ロシア民話(こどものとも絵本)Bookおおきなかぶ―ロシア民話(こどものとも絵本)


著者:A.トルストイ

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2009年10月26日 (月)

夢の食卓

 レス協の「經營者とおかみのトップ・セミナー」は仙臺伊達家御用藏を勤めた「勝山」が母體となつた「勝山館」で行はれた。

P1040090P1040094 そして、食味會では地元の山海珍味を贅澤に使つた夢の食卓であった。兎に角、豪華な上に豪華で、とても會費では賄はれるやうな代物ではない。前菜の畫像だけでもご覧頂きたい。そして、自社直輸入のシャムパーニュはサーベルで開け、そして最初の白ワインは何と1995年のコルトン・シャルルマーニュだ。オスピス・ド・ボーヌの競賣で樽ごと落札して瓶詰めさせて持って來たものだと云ふ。偶然、結婚記念年であつた爲、一人だけ緊張も高まる。複雑でふくよかな香り、まだまだ酸味の強い上品な樽を感じさせる味はひは流石。こんな食事は二度とできないであらう。贅澤過ぎて罰が當たらないか心配である。

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2009年10月23日 (金)

元同僚

 レス協のセミナーで杜の都へ。午後からの講義故、少し前に到着してベルラン開店當時働いてくれた元同僚の店を訪ねた。義母の居酒屋を氣輕な佛蘭西料理に直して元氣に頑張つてゐた。仙臺中央驛から歩いて10分程度、表通りから一本入つた細い路地にその「ん・BISTRO」は在った。地上階はカウンターのみ、二階の卓子席に通され、前日のすき燒で胃が重く、お魚ランチを頂くことに。スープ、パン、サラダ仕立ての魚料理、小デザートに珈琲まで附いて800圓と云ふお値打ち價格なのに先づ驚かされた。20年前は厨房に空きがなく、ホールを擔當してくれた尾関克己シェフはその後、彼方此方で修行を重ね、すっかり立派なコックとなり、穏やかな料理を食べさせてくれた。
 未だ、お腹の空いてゐないところに南瓜の優しいクリームスープで胃も動き出し、久し振りに食べたバケットも旨い。疲れた胃には上等なオリーヴ油や緑黄色野菜が嬉しい。ほんの一口のデザートにも十分滿足させられた。また、機會を作り訪ねたい。
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2009年10月22日 (木)

江戸を知り、そして勝つ

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 東大の近く、湯島天神の傍らに在る「江知勝」ですきや連の一周年記念の集まりがあつた。明治4年創業からこの地で一高や東大生相手に牛鍋を食べさせた老舗だ。初代の越後屋勝治郎が「江戸を知り、そして勝つ」と云ふ意味で「江知勝」と名附けたと云ふ。中庭には鯉の棲む池も在り、とても風情のある日本家屋。午後から先代たちが集まり座談會を開き(雑誌に載る筈)、夕刻、10月15日が「すき燒通の日」に制定されたと報告があり、安中市で昔乍らの醤油を造り續ける「有田屋」の湯淺康毅社長が講義。工程を省略した安價な醤油が全盛だが、醸造後寝かせた醤油は味が違ふことを水で20倍に薄めたものを飲んで確認。旨味がある。

Nec_0301 愈々、お待ちかねのすき燒。人數が多い所爲か、最初から肉もザク(野菜)に割下も鍋に入つた状態で提供される。やや厚めに切った肩ロースではあつたが美味しく頂いた。落ち着いた建物で食すと矢張り雰圍氣が違ふので味はいも違つたものになる。

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2009年10月21日 (水)

ドン・キホーテ

Nec_0298 新國立劇場のバレヱ公演《ドン・キホーテ》を家族を連れて觀る。三階右席4枚。ご存知、騎士道物語を讀み過ぎ、妄想から自分は傳説の騎士だと思ひ込み、「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乘り、從者サンチョ・パンサを引き連れて放浪遍歴の旅に出る物語だ。併し、バレヱ故、主人公は村の娘(ザハロワ)と戀中の青年(ウヴァーロフ)を結び附ける挿話が中心となる。
 長身で手足が長くスックと立つだけで繪になる主役の二人。柔軟に動くしなやかな肢體と驚異的な跳躍力が文句なく素晴らしい、二人が登場するだけでもう視線は釘附けとなる。ほんの僅かな動作や表情だけでも瞬く間に觀客の氣持ちを掴んでしまふ。日本人ダンサーが決して下手な譯ではない、十分上手なのだが、格が違ふと云ふか、體角の差は劣つてしまふのだ。普段はぐっすりお休みするかみさんが、珍しく「綺麗!格好いい!」を連發して舞體から目を離さなかった。

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2009年10月20日 (火)

移轉&新創開館

 この間、廣尾に移轉したばかりの山種美術館へ。展示室は地下にあり、やや狭いもののとても見易い。この開館記念特別展「速水御舟 -日本畫への挑戰-」には、有名な「炎舞」を始め前期後期で138點も並ぶ爲、じっくりと觀ることができる。學生時代の古典模寫から始まり、新しい描き方を模索し續け新日本畫への挑戰が年代順に並び、御舟40年の人生を疑似體驗できた。

Nec_0294_2 そして、同じく改築新創開館したばかりの新・根津美術館へ。鎌倉時代に描かれた國寶「那智の瀧」も修復が終はり、目玉として展示されてゐる。胡粉が剥落して瀧の真實味に欠け、背景も薄ぼんやりしてよく觀えないものの、暫く觀てゐると奥行きを感じ、轟音を伴ひ落水する感じがして來るから不思議。常設展示としては、一大蒐集品として著名な古代中國殷の青銅器や、硝子張りの展示用茶室も誂へられて、茶會の樣子が再現され、疊の上に展示された茶器も素晴らしい。「欲しい」と嘆息するおばさんの聲も出てゐたが、千利休作の象牙の茶杓など持つてゐても使ひこなせないだらうに。

 庭園に出ると、碧に附き出すやうに新設されたカフェも硝子張りとなり、庭の道も整備されて散策し易くなった。山種より廣々としてゐる分、樣子見の大勢のお客さんが居ても、大丈夫であった。

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2009年10月19日 (月)

日本美術院

 このところ、毎日休憩時間に展覧會巡りです。白金自然教育園の隣、松岡美術館の「大觀・觀山と日本美術員の畫家たち展」へ。
 後輩から招待券を頂き乍ら、全く來られなかつたものでやっと實現。寫眞入の作家解説やQRコードによる説明文があつたり、軸や屏風の説明書もあつて親切な反面、作品解説が殆どないのが殘念。ゆったりとした間隔で飾られてゐるし、人が全然ゐないので落ち着いてじっくり見られた。

 大觀は幾度となく、彼方此方で見て來てゐるが飽きない。雄辯に語つてくれる。それに對して、觀山の瑠璃色いsた富士山はプリンのやうであり、それでゐて力が抜けてゐて雄大さがあるから面白い。明治神宮で觀た菱田春草の「落葉」六曲一雙屏風が有り、吃驚して近附いてみたら「工藝畫」、所謂複製でした。それでも遜色なくご自宅に松岡さんが飾られてゐたのなら、何ら問題なかつたことでせう。
 中國の「宮廷工藝の粋展」も併設展示室で同時開催され、収藏品の翡翠の香炉、白磁に碧の美しい景徳鎮、黄皿、漆を塗ってから掘って彫刻を施した漆器等もあり、「明清の繪畫展」では巻子の繪や仕立ての違ふ中國の掛軸や色紙のやうなものに描かれたものなど多數展示。
 その上一階は常設展示故、ガンダーラの古代佛教美術、ヒンドゥー教の神々、現代彫刻まであり飽きさせない。ガンダーラの菩薩は鼻筋が通ったイケメンで、然も私のやうな八の字の立派なヒゲにロンゲと云ふ出で立ち。日本の菩薩樣とは大違ひであった。
 歩き疲れるものの、見終わるとイライラもなくなり心安良かになるから不思議。

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2009年10月16日 (金)

師弟

 新版畫の展覧會は今月は他にもあつて、小石川に在る個人美術館、礫川浮世絵美術館に足を運んだ。「小林清親と土屋光逸 -師弟による明治の面影木版畫展-」と云ふ矢張り明治の終はりから昭和に掛けての新版畫展なのだが、住み込みで師匠の家に入つて雑事をこなし、なかなか畫家として一本立ちできなかつた土屋光逸の作品の數々を見られた。このやうにまだ埋もれた人は大勢居るのだらう。師匠に比べると暗ぼったく陰氣な感じがする夜景が多いが、東京風景シリーズ 1933(昭和8)年の「銀座の雨」、「日比谷の月」、「増上寺の雪」、或ひは「牛込神楽坂」1939(昭和14)年は見知った懐かしい風景ばかり。
 「増上寺の雪」は川瀬巴水の同題 1953(昭和28)年に比べると、重いぼた雪がつもった感じで、吹雪いて寒々してゐる巴水とはだいぶ趣を異にしてをり、戰前と戰後と云ふ20年の隔たりはあるものの、捉へ方が違つて面白い。碧さはコバルトなのだらうか、色を幾重にも重ねて表現する木版畫も愉快この上ない。

 今回の展示作品は土井利一さん個人の蒐集品150枚の内の何枚かだと云ふ。どの道にもマニアは居るもの。それをまた個人美術館で開くので靜かでいい。

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2009年10月15日 (木)

新版畫

Hasui_2 大正時代に入ると傳統的な浮世繪技法により、木版畫で風景、美人畫、役者繪、風俗を描いてをり、世界的な蒐集家であつたロバート・ムラー・コレクションの里歸へり本邦初公開作品群が江戸津教博物館で公開されてゐる。題して「蘇へる浮世繪 -麗しき大正新版畫展」である。

 誇張された江戸時代の繪よりも、餘程こちらの方が親しみが沸く。例へば「雪の芝増上寺」を描いた川瀬巴水の作品は1929(昭和4)年のツェッペリン伯號が東京府上空を横斷した年に描かれてゐる。橋口五葉の「髪梳(クシケズ)る女」1920年(大正9)年は技術の進歩も感じられる程、髪の毛1本1本描き混まれ細かいのに風情が感じられる。また、笠松紫浪「雨の新橋」1935(昭和10)年には正面に今は無き天麩羅「天國(テンクニ)」の舊舎が描かれ、建物を知つてゐる者には郷愁を誘ふ。或ひはフリッツ・カペラリ「藍と白」1916(大正5)年は古磁器屋の店先で朝顔の蔦を絡ませる紐を結ぶ店の若い者とふと足を停めた和装の女性が描かれてゐるが、これなどはわたせせいぞうのイラストを彷彿とさせる色遣ひで類似點を發見して、妙に嬉しくなつた。伊藤親水も随分と新版畫を手掛けてゐたことも知る。懐かしい昭和に出逢ふ展覧會であつた。

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2009年10月14日 (水)

朦朧體

 明治神宮、寶物展示室へ「菱田春草(ヒシダシュンショウ)展」を觀に行く。
 早くに夭折した所爲か名前も畫風も知らなかつたが、大觀、觀山の一年後輩だと云ふ。一時は「朦朧體」と呼ばれる輪郭線を廢した無線描法を試みたが、非難囂々であつたらしい。現在の我々から見れば全くおかしくない。どその後の作品は見事な構圖と繊細な筆運びが魅力的だ。展示作品の入れ替へがある爲、また來ねばなるまい。

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2009年10月13日 (火)

浮世繪

Mitui1Mitui2 三井本館7階の三井記念美術館へ「夢と追憶の江戸」-高橋誠一郎浮世繪コレクション名品展-を觀に行く。經濟學者の故高橋誠一郎が蒐集した作品群は慶應義塾に委譲され、今回は創立150年記念事業として特別に公開され、然も16年振りだと云ふ。木版畫は退色するので、長い時間光線に當てられない爲、薄暗い明かりで見るのだが思ひの他、色が褪せてゐないので往事を忍ばせるに十分。
 菱川師宣の「衝立の蔭」から始まる、歌麿の美人畫、廣重の「東海道五十三次」の日本橋、寫樂の「三世市川高麗藏の志賀大七」に北斎の「富嶽三十六景」から月岡芳年の惨たらしい繪や光線畫の小林清親まで、實に變化に豐み役者繪、遊女繪、大首繪、風景等見應へのあるものばかり。恐れ入った。然も、3期入れ替へだと云ふ。初ッ端から、また來たくなるものは困る。特に寫樂の志賀大七は背景が只の灰色だと思はれてゐたのが、實際には雲母摺りされ金屬のやうに鈍色にもや~と輝いてゐた。

 因みにこの建物はツェッペリン伯號が寄港した1929年竣工の開館80周年だと云ふ。美術館には隣と日本橋三井タワー側から入るのだが、矢印がゆっくり回る文字盤式の昇降機は懐かしい。とても綺麗に修復され、展示室1は當時の役員食堂であつたと云ふ。贅澤な大理石や木々を使ふ豪奢な雰囲氣が今も殘されてゐるのは氣持ちいい。

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2009年10月 9日 (金)

嫉妬

Otello 2009年~10年シーズン幕開け、ヴェルディの《オテロ》を新國で觀る。ご存知シェイクスピアの『オセロ』が原作だが、そちらは讀んだことがなく、專らヴェルディばかり。然も、28年前にミラノ・スカラ座の初來日公演を觀て以來、劇場で觀るのは初めてと云ふ歪な戀人である。高校生の時に度肝を抜かされたので、その初日の實況録音放送をカセットに取り、暫く聽いたものの、レコードもCDも持つてゐない。
 リッカルド・フリッツァの指揮する東フィルの幕開けから、記憶がずんずん蘇る。クライバーはかう盛り上げたとか、ドミンゴはかう歌つたとか、ゼッフィレルリの演出はどうであつたかと瑣末な事柄が次々と頭の中を驅け巡るが、その横で今鳴り響く音も十二分に樂しむことができた。

 キプロス嶋にムーア人のオテロ(ステファン・グールド)率いるヴェネツィア海軍が戻るところから始まるが、その嵐の場面に稲妻が光り、まるでヴェニスのやうな装置に張られた水が波立ち、市民がこちらへ向かつて祈るのだ。スカラ座の時は背景に船の帆崎が揺れてゐたのと違ひ、オテロや武官が觀客席から下手オケピの上に掛けられた橋を渡り登場するのには吃驚。花火は飛び出すし、マリオ・マルトーネの演出の妙!

 それからは出世街道で正直者の副官カッシオ(ブラゴイ・ナコスキ)に出し抜かれた旗手イヤーゴ(ルチオ・ガッロ)が惡の権化と化して、オテロに妻デズデーモナ(タマール・イヴェーリ)が不貞を働いてゐるとそっと嫉妬の炎を點す…。

 中央にはオテロとデズデーモナの住まひが据えられ、それが一幕ではちんけな塔にしか見えないが、英雄であつたオテロが心理的に追ひ詰められて行くと、榮華の奧に潜む小さな自分の姿にも見えて來るから不思議。4幕では中庭に浮かぶ寝室のやうになり、光と蔭の中にくっきりと心理が浮かび上がり、とてもよかった。

 今回は奮發して2階中央席。3階のやうに音が抜けず、やや籠もる感じ。グールドはやや聞き取り難いが恰幅がありオテロらしく、水路で水浸しになつて死ぬ最期が宜しい。ガッロはほぼ出ッ放しではあるものの、スマートな長身と相まって憎々しさ百倍。優男のナコスキも聲が通らないのが玉に瑕。急遽代役としてデズデーモナを歌ったイヴェーリは好演。演出上か、他の男に色目を使ふところもあり、きっとオテロの目を通して描いたのであらう。
 

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2009年10月 8日 (木)

鶴心さんのDVD

 應援してゐる薩摩琵琶奏者、友吉鶴心さんのDVDがこの9月に發賣になつたのを思ひ出し註文した。さうしたら動畫も公開してゐたことを知る。これがまた格好いい。

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2009年10月 7日 (水)

素淨瑠璃

 日經ホール杮落し記念公演のひとつ、竹本住大夫の素淨瑠璃を聽いた。《菅原傳授手習鑑》より〈佐太村櫻丸切腹の段〉と對談。前から二列目故、ホールに響く聲ではなく、直接身體から發せられる大迫力。金屏風前に住大夫と錦糸の太棹のみ。

 CDでは聽いてはゐるものの、實際の舞臺は未だ見たこともない。人形もなく、字幕もないのに、きちんと演じ分けられてゐるので安心して聽けるどころか、好々爺の白太夫の心情が變化してゐるのが手に取るやうにわかる。死を覺悟した櫻丸と悲嘆に呉れる妻・八重の別れ、腹切刀を渡す父・白大夫。三人のそれぞれの思ひが肚の底から湧き上がる聲に乘り、スペクタクルなドラマとして語られる。
 白太夫が「泣くな」と言へば、八重が「あい」と應へ、幾度も遣り取りする切なさ。そして、白太夫の「なまいだ」を繰り返し、「南無阿弥陀佛」と言ふ最高潮。錦糸の撥捌きも冴へ、情を語る至福の藝事を聽くことができた。

 赤川次郎との對談は日經の司會会者が巧く師匠から話を引き出し、肚を使ふ、眉間から聲を出す、息遣ひだとか細かい技を傳へてくれた。若い頃日々聞いて、真似して學へて來たものだといふ。早く、後繼ぎが育つて欲しいものだ。何せ、師匠ももうすぐ85歳…。

 

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2009年10月 6日 (火)

同窓會

Cla 大學の倶樂部の同窓會があつた。管絃樂團で喇叭(トラムペット)を吹いてゐたものだが、現役諸君の演奏を聽くともっと巧くなつてゐる氣がする。とても上手なのだ。
 クラリネット七重奏によりチャイコフスキイの《眠りの森の美女》からの旋律がマイクを使はずとも、廣い會場外迄も響き亘る。矢張り生演奏がいい。

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2009年10月 5日 (月)

國産初

Hanayasiki お彼岸のお墓參りの後、何故か淺草花屋敷へ。此処のローラーコースターは1953(昭和28)年に國産初のローラーコースターとして登場して以來、稼働するものとしては國内最古を誇る。昔はベルト着用であつたものが、棒で押さへるとか、箱もレールも新しくはなつてゐるものの、短さ、民家が迫る感じは以前のまま。無理せず、手輕な遊戯だ。

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2009年10月 2日 (金)

乙女の瀧

Otome 實習で泊まったホテルの横道を進むと「乙女の瀧」が在るのを思ひ出し、食後に向かふ。渓谷に向かつて階段を下りる途中から、音は聞こえるものの姿は見えず、中腹位の踊り場が實は瀧の目の前で、水飛沫を浴びる程近い大迫力には吃驚。もっと近寄つて寫眞を撮る人も居るが、足下を考へるととても近附けない。1ccに20,000個のマイナスイオンとの看板もあるが、科學的數値がなくとも清々しさこの上なく氣持ちよかった。

 その後、中央道の澁滯にはまり行きの倍の時間で歸へつて來たので、この爽やかな氣持ちは長く續かなかつたのが殘念。

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2009年10月 1日 (木)

お禮參り

Ito 銀週間に蓼科の康耀堂美術館へお世話になつたお禮に行った。實習仲間も驅け附け、私は家族に自分の解説を讀ませ、展示を見せる爲でもある。附き合はされてゐると感じる子供たちは、自分たちでさっさと一通り見て、ベンチに腰掛け携帶ゲームをし始めたのには困った。それでゐて、あの繪が好きだとか、見るところは見てるから恐れ入る。

 その時、近くのお勸めの店が一杯だと聞き、通り掛かった地元の方から、館から一本道を5分も下らない右側に在る料理倶樂部「いとう」が美味しいと聞き出掛ける。老夫婦が趣味でやってゐるやうな、自宅を改装したお店で滿席であつた。暫く待つて本日の晝食の内、豚ロースを頼むと、裏の畑で採れた高原野菜をふんだんに使つた滋味溢れる味であつた。

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