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2009年11月19日 (木)

文樂劇場

 折角、關西へ來て文樂聽かないで歸へる手はない。白耳義人たちは通譯附で奈良ツアーへ出掛け、自分は用なしとなつたのを幸ひに、文樂劇場へ。近頃は出演者に直接、切符をお願ひできるやうになつた爲、最良の席で觀劇できるやうになつた。

 確か、11年前位であらうか、白耳義の知人の息子を夏休みの4週間預かつたことがあつた。その時に心中ものを此処で初めて聽いて、住大夫だけ抜きに出てゐたことを覺へてゐる。年寄りの方が情があつて上手なのに一番驚いたものだ。

 今回、住大夫は《心中天網嶋》の〈河庄の段〉を演じてくれた。
 妻子があり乍ら、遊女に現(うつゝ)を抜かすし、商賣を疎かにするやうな駄目な若旦那、紙屋治兵衛が主人公。遊女、小春と治兵衛は戀中なのだが、心配した兄、孫右衛門が武士に成り濟まして諭しに來る。兄は遊女こそ女郎で惡女だと決め附けてゐる堅物なのだが、實は小春が治兵衛の妻、おさんからの諦めて欲しいと云ふ手紙を胸にして、心中を諦めてくれたことを知り、心動かされるが、この場面では気持ちと行動が裏腹で、皆、ほんたうのことを口に出せない。そのハラハラ、ドキドキが見所。

 住大夫の語り分けは得も云はれず、伸び伸びと語つてくれた。
騙されたと思ひ込んだ治兵衛は怒り心頭、小春を足蹴にし、今にも打ち明けたいけれど、治兵衛の妻子の爲に身を引かうと云ふ遊女の意地、のぶつかり合ひが素晴らしい。ひょっとするとそんな兄に、或ひは道を外さないとも限らない人間の弱さをとくと考へさせる。この場面を聽けただけでもよかった。間延びせず、適度な緊張感を續ける錦糸の太棹の音も、東京より滑らかに聽こえた。大阪辯の中で聽く文樂は格別であった。

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