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2009年12月17日 (木)

職権亂用

Sinkoku 1800(寛政12)年6月17日の午前から翌朝迄の凡そ20時間を描いたプッチーニ(1858 - 1924)が描いた歌劇《トスカ》。佛蘭西革命により一時は共和國制が開かれたものの、羅馬(ローマ)は再びナポリ王黨派の支配下となり、妹マリー・アントワネット(1755 - 1793)の敵を討つが如く、ナポリ王妃マリア・カロリーナ(1752-1814, マリア・テレジア10女)は徹底的な粛清彈壓を加へてゐた。6月10日に警視総監になつたばかりのスカルピアは元共和國領事アンジェロッティの脱獄を知り、トスカを操り探し出さうとする。

 嫉妬深いトスカは教會でマグダラのマリア像を描く戀人カヴァラドッシが浮氣をしてゐたと吹き込み、それを糾す爲にアンジェロッティを匿つてゐる筈のカヴァラドッシの所へと行かせる。そして、政治犯と女としてのトスカを一石二鳥で手に入れやうとほくそ笑むスカルピアが憎々しげでないといけない。マレンゴの戰ひで佛蘭西軍を追ひ返したと云ふ一報が届けられて戰勝を祝ふミサが行はれる前で、スカルピアは野心を語る第一幕終幕部分の迫力たるや、他に比べるものがない。

 今回の新國に於けるアントネッロ・マダウ=ディアツの演出は迫り出しを巧く使ひ、瞬く間に祭壇が背景に現れたのが素晴らしかつた。ジョン・ルンドグレンのスカルピアもなかなかよい。カヴァラドッシ役のカルロ・ヴェントレよりも男前なので、冷酷無慈悲な感じがよく出てゐた。かう云ふイヤな奴が居るから善人が引き立つのだ。

 バスのルッジェーロ・ライモンディがこのバリトン役に挑んだ映畫から〈テ・デウム〉

 そして、脱獄囚が見附からないとなると、カヴァラドッシを隣の部屋で拷問の末、聞き出してしまふ。その〈拷問〉場面

 その後トスカに殺されてしまふのだが、スカルピアの存在感は光る。現存する建物での物語の展開は、現實の雰圍氣を壊さずに、歴史劇として見られる装置にするのがたいへんだらう。第一幕の聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教會、第二幕のファルネーゼ宮殿(現佛蘭西大使館)、そして第三幕の聖アンジェロ城。この屋上から追い詰められたトスカは飛び降りてしまひ幕引きとなる。

 歐州に渡って劇場で覺へた歌劇故、細かい歌の意味は知らなかつたが、第二幕でスカルピアが夕食で飲んでゐるのが西班牙ワインだと初めて知った。字幕もよいものだ。
 フレデリック・シャスランの指揮はテムポもよく、ぐいぐいと劇中に飲み込まれて行く。主題が終はる毎にやや空白が生まれるのが殘念であったが、深い低音から高音まで東フィルから音を引き出し、熱演であつた。

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