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2010年2月10日 (水)

線香の穴

 先日、日經新聞文化欄で紹介された市川孝典作品展「murmur(木々のざわめき)」を觀に、馬喰町のFOIL GALLEYへ。此処は古いマンションの二階の一室をぶち抜きにし、タイルを剥がしたままの地の床、天井も空調の配管が剥き出しで、白壁と照明だけのずいぶんとシンプルな畫廊。

 今回は市川さん初めての個展であり、新作15点が並ぶ。この人の絵畫はどれも白い和紙に線香で穴を空け、煤で陰影を附け、裏に黒い紙を置いた全く新しい描き方の作品であつた。遠くから觀ると白黒冩眞でもあり、やや近附くと水墨畫のやうでもあり、更に近寄ると小さな焦げ穴がたくさん空いてゐる、不思議な感覺だ。すべて心に浮かぶ風景を記憶のままに描いてゐるといふ。それにも拘はらず冩眞を元に描いてゐるやうな錯覺を覺える程現實味がある。

 然も、寸分違はぬ同じやうな煉瓦塀に蔦の絡まる作品が並べて掛けてあったが、この二作品は重ねて描いたものではなく、次期もずれているにも拘はらず、出來上がつてみたらこの記憶の繪が全く一緒だったと云ふ。それも出來上がつてから氣附いたので、同じ記憶の抽斗から出したのだらうと畫廊の方の辯。白黒の畫面は一寸、映畫「2001年宇宙の旅」で唯一生き殘つたボーマン船長がモノリス(黒い板)から刺戟を受けて心象風景が續く時のやうな感じにも見える。これを觀た我々も進化できるのだらうか。

 佛蘭西を旅した際に夜、懐中電灯で森を歩いた時の記憶の風景だと云ふのだが、どこかで見たことのあるやうな木々や森、草や根元の絵。他にも靜物畫も描くさうだが、今回は「木々のざわめき」の題の通り、そよ風を感じさせるやうな作品ばかりであった。

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