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2010年2月 5日 (金)

粋でモダンで繊細で

 埼玉近代美術館で開催中の「小村雪岱とその時代」展の催し、山下裕二先生による講演「昭和の春信・小村雪岱を応援する」を聞く。

 前回、サントリー美術館で鏑木清方の講演を聞いて、すっかりファンになり、今回は無料でもあり、また小一時間掛けて、北浦和まで参上した。定員100名の講堂に20席増やしても立ち見が出るほど盛況であつた。

 既に熱心なファンも居ることが判り話辛いと言ふが、まづ散らしの「粋でモダンで繊細で」と云ふ文章が、全くその通りだと。名前の讀み難い名前はとても、損をしてゐる。それだけで飛ばされてしまふ。
 泉鏡花が磁場のやうにして、清方、雪岱、英朋が吸ひ寄せられ、それぞれ挿繪や装幀から發展したが、この挿繪は畫壇から輕視されて來たのが、やっと美術として認められて來た。

 雪岱特有なモディリアのように首が細く、一寸田中絹代のような切れ目の細面の女性像が若い頃から描かれた譯ではなく、模冩を通じて日本美術を學んだことが活かされていること。背景に斜線の細かい線(障子や畳など)が並ぶこと、女性の鬢(びん:耳際の髪)が必用に描かれている特徴や、春信を始め琳派の影響、で描かれたのか詳しく説明してくれた。

 「心中天網嶋」から「河庄」の別れの場面を描いた肉筆畫は表装もよく、斜めの裂(キレ)の使ひ方など、文樂の内容をよく知る人が手掛けたのだらうとのお話。夢二は紙屋治兵衛が頬被りをして顔だけしか描いてゐないが、偽りの愛想を尽かした治兵衛と遊女・小春の別れの場面を靜かに描いてゐる。

 そして「見立寒山拾得」はレズビアン的な女性二人が顔を寄せて、箒と落ち葉に佛典を描いてゐる圖だ。この元となる寒山と拾得は中國の僧で、襤褸切れを着た寒山が經巻を開き、拾得が箒を持つ禪畫の畫題として、昔からあるもの。春信は結構野暮ったいが、こちらの雪岱の方が洗練された感じ。更に時代を突き進めば、バカボンのパパとレレレのおじさんはこの畫題に沿つてゐるとのお話。面白い解釈!

決して上手な筆運びではないが、江戸時代の絵画のエッセンスを汲み取り、雪岱が濾して、独自の味付けで上品な作品になっていると、途中冗談も含め、分かり易い言葉や喩へ話で會場は何度も湧いた。

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