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2010年3月24日 (水)

文樂地方公演

 名殘りの雪の日、文樂地方公演の内夜の部を聽きに、大田區民プラザへ赴く。國立劇場でしか人形淨瑠璃に接して來なかつただけに樂しいであつた。
 開演前に錦糸さんに樂屋へ挨拶へ行くと、國立劇場とは違ひ廊下に大きな荷物箱が置かれ、人形遣ひさん、大夫さん、三味線さんそれぞれくつろいでらして、何処が三味線さんの樂屋か判らず、その場に居合はせた簑次郎さんにお尋ねすると丁寧に教へて下さり、大部屋行き着くことができた。部屋には弟子の錦吾さんと丁度二人だった。ほんの立ち話だけしかできなかったが、旅から旅への旅烏ではご苦勞も多いだらうに、そんなことは氣にせず、多くの人に聞いて貰ひたいと云ふ力強いオーラが出てゐた。さすがはプロフェッショナル。

 まづ、一輔さんによる粗筋解説が早口の大阪辯ですらすら語られ、前半は《繪本太功記》より〈夕顔棚の段〉〈尼崎の段〉と大曲。床は回轉しない急拵への装置故、御簾が掛かり、定式幕ではなく上に上がる緞帳と云ふ何とも見慣れないもの。然も床が檜ではない爲、足遣ひさんの踏ん張りが響かない。また、大夫の聲が普通のホール故に、餘計に響きすぎる感じが何とも違和感があった。併し、次第にそれでも上演できると云ふありがたうさをかみしめて聽くこととなった。

 津國大夫は齒切れがよくなく、津駒大夫はビブラートが倍増したやうで普段と違つて大げさに聞こえ、文字久大夫は減り張りはあるものの、妙に張り切り過ぎの場面と全く聞こえない箇所もあり、まだまだ名人藝には遠く感じた。そこへ行くと安定感のある錦糸さんが一番よかった。途中、糸が切れたのか取り替へる「糸送り」も餘裕綽々で、逆にこちらは勝手に間に合ふにかとハラハラしてゐた。

 後半は《日高川入相花王》より〈渡し場の段〉。安珍に捨てられたと逆上し、清姫が大蛇となつて日高側を渡る場面だ。昨年五月の公演の際は紋壽の清姫で華麗さ、不憫さが表現されてゐたが、今回の簑次郎は憎しみが勝り、激流を渡る際の何と激しいこと。上へ下へ、稲光と共に途中大蛇に變身してしまふのもあり得る話だと思ふ程。迫真の演技だった。ここまで情念の塊となる女は怖いと云ふ話だ。

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