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2010年4月28日 (水)

見納め

Sajiki2 愈(いよいよ)歌舞伎座も終はりである。本日の千穐樂、明後日の閉場式をもつて木挽町とも3年間のお別れだ。そんなに熱心なファンではないが、それでも年に數回は行つてゐただけに、何とも寂しい。
 昨夜は友人の招きで第三部を、下手の舞臺に一番近い「西一番」の桟敷で觀た。最初は視線も氣になり恥ずかしい氣もするが、普段でもはッと髭に目線を感じてゐるので、氣にならないどころか、芝居に集中できる。たぶん、一等席の前の方で觀た方が全部を見渡せるのだらが、桟敷のバランスはまた別のところにあつて、此処からの目線は舞臺で座る役者と同じなのだから、妙に臨場感がある。

 親子の情を描いた《實録先代萩》、江戸情緒たっぷりな《助六由縁江戸櫻》であつた。生憎、芝翫休場故福助の淺岡であつたが、抑へた演技と子役の上手さ、落ち着いた幸四郎に支へられて見事に演じ切つてゐた。
 歌舞伎十八番の内に入る市川家のお家藝「助六」は氣ッ風の良さが求められる。海老藏の口上はすっきりとしてカチりと決まり、現在望み得る最高の役者が勢揃ひした舞臺は艶やかであり、素晴らしいと云ふ以外に言葉も出ず、終幕に相應しい演目であった。

 まづ、酔つてしまひ足をもたつかせ乍らの花魁道中を品よくそそとして、花道を出て來る傾城、揚巻役の玉三郎の美しいこと。五節句を象つた豪華な衣装はさぞかし重いだらうに。妹分の白玉役、福助とは格の差を見せ附け、同じく傾城役の若手、松也、梅枝、巳之助、新悟、菊史郎は舞臺上から食い入るやうに玉三郎の一擧手一動を覺へやうとしてゐる真劍さもひしひしと傳はつて來た。
 憎々しげな髭の意休は左團次が引き締め、さすがは團十郎、見直した。普段の役と違ひ大きく見えるし、花道で蛇の目傘を使つた所作も落ち着いてをり、極上の藝を見せてくれた。一寸出て來るだけだが福山のかつぎ壽吉役の三津五郎も存在感があり、喧嘩をしかけるくわんぺら門兵衛役の仁左衛門や白酒賣りの菊五郎等、何と贅澤な役者たちだらう。中でも殆どアドリブの通人里暁役の勘三郎の臺詞には、あんたあ、成田屋の兄さんに似てるねえ、だとか、もう明日でこの歌舞伎座ともお別れだ、中村座を宜敷くと、おちゃらけた中にもしんみりさせ、大いに沸かせてくれた。子役からベテランまでのぶ厚い層があるからこそ、ここまで復興したのだらう。客入りの惡い寂しい時代もあつたと聞く。これからの3年間で、どれだけ若さを保ち、若手が勢ひを増すのか正念場とならう。

 桟敷では途中、注文したお辨當も届けられ、幕間に平戸間のお客を下に優雅に食べられる。但し、花道では必ず目の前で立ち止まるのが素晴らしいが、とても眩しい。その分、こちらまで役者の氣分に浸れ、近い所爲でお囃子の音玉も賑やかに、これ以上ない席であつた。ほんたうに良いものを觀せて貰った。昂奮醒めやらず、歸へりにワインを飲んで歸へる。


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